
トモエガモは、オスの顔にクリーム色・緑色・黒色などが入り組んだ「巴(ともえ)模様」がある、全長約40cmの小型のカモです。日本には主に冬鳥として渡来し、湖や池、河川などで見られます。
オスの華やかな顔に対し、メスは全体が褐色で、くちばしの付け根にある白い斑が手掛かりになります。ただし、メスに似た羽色のオスもいるため、白斑や地味な色だけで性別を決めることはできません。
この記事では、トモエガモの名前の由来からオス・メスの特徴、コガモとの違い、見られる時期、鳴き声や食べ物までを紹介します。
最初に確認したい3つの特徴
- 繁殖羽のオス:顔にクリーム色・緑色・黒色などの巴模様がある。
- メス:褐色の体と、くちばしの付け根の白斑を組み合わせて見る。
- 似たコガモとの比較:大きさだけで決めず、顔の模様と体側を確かめる。
トモエガモとは?名前の由来と基本情報

トモエガモはカモ目カモ科の野鳥です。名前は、オスの顔の模様が、曲線の組み合わさった「巴」に見えることに由来します。漢字では「巴鴨」と書きます。
| 和名・漢字 | トモエガモ・巴鴨 |
|---|---|
| 分類 | カモ目カモ科 |
| 学名 | Sibirionetta formosa |
| 英名 | Baikal Teal |
| 全長 | 約40cm。コガモよりやや大きい小型のカモ |
| 日本での渡り区分 | 主に冬鳥 |
| よく見られる環境 | 湖、池、河川、ダム湖など |
繁殖地は東部シベリアなどの北方にあり、冬には日本を含む東アジアへ渡ります。日本で目にする冬の姿は、主に越冬のために渡来したものです。
トモエガモのオス・メスの特徴と見分け方

まずは顔を横から見て、模様の配置を確かめましょう。次に胸や体側、肩から伸びる羽へ視線を移すと、顔だけでは分からなかった特徴を拾えます。
| 見る部分 | オスの繁殖羽 | メス | オスのエクリプス |
|---|---|---|---|
| 顔 | クリーム色・緑色・黒色などの巴模様 | 褐色で、くちばしの付け根に白斑 | メスに似た地味な顔。付け根に白斑が出る |
| 胸・体側 | 胸に赤みと細かな黒斑。体側は灰色に見える | 全体に褐色で、黒褐色のまだら模様 | 褐色を基調とした、メスに似た羽色 |
| 判断のポイント | 顔の配色と体側を合わせて確認 | 白斑だけで性別を断定しない | 地味な羽色でも、オスの可能性を残す |
オスは顔の巴模様と、肩から伸びる飾り羽に注目
繁殖羽のオスは、顔の淡い黄色からクリーム色の部分と、光沢のある緑色、黒色、白色の組み合わせが目立ちます。「顔の一部が緑色」というだけでなく、明るい部分と暗い部分がどのように分かれているかを見るのがポイントです。
胸には赤みがあり、小さな黒い斑点が散らばります。体側は灰色に見え、背中側には長い肩羽が伸びます。顔を隠しているときも、胸・体側・肩羽を順に確認してみましょう。
メスはくちばしの付け根にある白斑が手掛かり
メスは褐色の体に黒褐色の模様があり、コガモなど、ほかのカモのメスに似ています。とくに注目したいのは、くちばしが顔につながる部分の白い斑です。
顔が横を向いたときに、白斑の位置と形、頬の淡い色を確認します。遠い個体では白斑を見落とすこともあるため、見えないことだけを理由に候補から外さず、見やすい向きを待ちましょう。
エクリプスとは?地味な羽色のオスもいる
エクリプスは、繁殖後のオスに見られる、メスに似た地味な羽の状態です。トモエガモでも、オスのエクリプスではくちばしの付け根に白斑が見られます。
「白斑があるからメス」「巴模様がないからメス」とは限りません。換羽途中の個体もいるので、観察した時期、顔と体の羽の状態を合わせて考えます。性別が分からないときは、無理に決めず、確認できた模様を記録しておくと比較しやすくなります。
ほかのカモでも季節によってオスの姿が変わります。比較したい方は、オシドリのオス・メスの違いと夏の姿も参考にしてください。
トモエガモとコガモの違いは?顔の模様と体側を比較

トモエガモとコガモは、どちらも小型で、オスの顔に緑色の部分があります。離れた場所では大きさの差がつかみにくいため、顔の配色から比べると分かりやすくなります。
| 比較する点 | トモエガモ | コガモ |
|---|---|---|
| 大きさの目安 | 全長約40cm | 全長約38cm |
| オスの顔 (繁殖羽) |
クリーム色・緑色・黒色などが入り組んだ巴模様 | 茶色い頭の側面に緑色の帯がある |
| オスの体で見る点 | 赤みのある胸、灰色の体側、長い肩羽 | 尻の横にある黄色い三角形の模様 |
| メスを比べる出発点 | くちばしの付け根の白斑を探す | 顔の模様を見て、トモエガモの特徴と照合する |
メス同士を比べるときは、白斑のほかに肩から背中の羽の模様も見ます。トモエガモのメスは、コガモのメスに比べて肩から背の羽に細かな虫食い状の模様がなく、全体に赤褐色みを帯びて見えるのも手掛かりです。
実際の観察では、光の向きや羽の重なりで模様が見えにくくなります。顔を上げたときと泳いで横を向いたときの両方を見比べると、確認できる特徴が増えます。
マガモやヨシガモなども含めて比べたい場合は、カモ類の顔の特徴と違いで、顔の配色やくちばしを見比べてみてください。
トモエガモはいつ見られる?秋から春に渡来する冬鳥

日本での観察は冬が中心です。晩秋から早春にかけての観察を考えるとよいでしょう。ただし、渡来・渡去の時期や滞在する数には、地域や年によって差があります。
バードリサーチなどが実施した2022/23年の全国調査では、記録された個体数のピークは12〜1月でした。これはそのシーズンの調査結果であり、すべての場所で毎年同じ時期に数が最大になるという意味ではありません。
湖や池、河川などで越冬する
主な生息環境は、湖沼、池、河川、ダム湖などです。比較的日本海側で多く見られますが、近年は東日本でも大きな群れが観察されています。
トモエガモだけで密な群れを作ることがある一方、少数がほかのカモに混じる場合もあります。水面の群れ全体を眺めたあと、1羽ずつ顔の模様を確かめると探しやすくなります。
具体的な観察先を調べる場合は、トモエガモが見られる生息地と探す際のポイントをご覧ください。新宿御苑や北印旛沼など、当サイトで紹介している探鳥地を確認できます。
トモエガモの鳴き声・食べ物・群れでの行動

鳴き声は「コココッ」「クククッ」などと聞こえる
トモエガモは、「コココッ」「クククッ」などと表される声を出します。オスの声は「コッ、コッ」「オッ、オッ」と表現されることもあります。鳴き声の文字表現には幅があり、声だけで種類を決めるのは難しいため、顔や体の特徴も合わせて確かめましょう。
植物の種子などを食べ、夜に採食することが多い
食べ物には、イネ科などの植物の種子や落ち籾、水生植物の芽などがあります。水生昆虫や甲殻類を食べることもあり、食物は植物だけに限られません。
越冬地では、日中は水面で休息し、夜に水田などへ移動して採食する行動が知られています。昼間に浮かんで休む姿が目立つのは、こうした生活のリズムとも関係します。
大きな群れを作り、越冬中にも数が変わる
トモエガモには、同じ種類でまとまって行動する性質があります。大きな群れが一斉に飛ぶ姿が見られることもありますが、いつも同じ数が同じ場所にいるわけではありません。全国調査でも、短期間で個体数が大きく変わることが報告されています。
トモエガモを観察するときに確認したいポイント

- 最初に小型のカモを探す。大きさだけで決めず、群れの中の1羽ずつを見ます。
- 横顔を確認する。オスなら巴模様、褐色の個体ならくちばしの付け根の白斑を探します。
- 胸・体側・肩の羽を見る。顔が見えにくいときも、ほかの特徴と照らし合わせます。
- 観察日と見えた特徴を残す。換羽途中の姿や性別で迷った場合の比較に役立ちます。
双眼鏡で群れの位置をつかみ、遠い個体の顔を詳しく見たいときはフィールドスコープが役立ちます。水面の反射や逆光で色が分かりにくければ、顔を上げたり向きを変えたりするのを待ってみてください。
池の周囲の林や広場にも目を向けたい方は、庭・公園で見られる冬の鳥の特徴と見分け方もご覧ください。水辺とその周辺では、出会う野鳥の種類が変わります。
トモエガモについてよくある質問

トモエガモの名前の由来は何ですか?
オスの顔にある模様が「巴」に見えることが由来です。クリーム色や緑色、黒色、白色が組み合わさっており、漢字では「巴鴨」と書きます。
くちばしの付け根が白いトモエガモはメスですか?
メスの特徴の一つですが、オスのエクリプスにも白斑が見られます。白斑は種類を絞る手掛かりとして使い、性別は羽の状態や季節も合わせて判断します。
トモエガモは珍しい鳥ですか?
観察のしやすさには地域差があります。近年は国内の越冬数が増え、大群が記録される場所もありますが、どこの池でも普通に見られるとは限りません。過去の記録と、その年の状況を分けて考えることが大切です。
トモエガモは絶滅危惧種ですか?
環境省の現行掲載では「情報不足(DD)」です。以前の第4次レッドリストでは「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」とされていました。近年の個体数増加を受けて評価は変わっていますが、増加の理由や今後も安定して維持されるかについて、継続した把握が必要とされています。都道府県の評価は国の評価と異なる場合があります。
保全区分は2026年10月25日に環境省の掲載情報を確認。
トモエガモは日本で繁殖しますか?
主な繁殖地は東部シベリアなどで、日本では主に冬を過ごすために渡来する鳥です。冬にオスが鮮やかな「繁殖羽」になっていても、その場所で繁殖するという意味ではありません。
顔の模様から確かめて、観察先も調べてみよう

トモエガモを見分ける出発点は、繁殖羽のオスの巴模様と、メスなどに見られるくちばしの付け根の白斑です。コガモと迷ったら、顔の配色だけでなく、胸や体側、肩の羽も比べてみてください。
特徴を確認したら、トモエガモの生息地と探し方へ進むと、次の観察先を考えやすくなります。
参考資料



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