
ツバメチドリは、長くとがった翼と二股の尾を持ち、空中で昆虫を捕まえるチドリ目ツバメチドリ科の野鳥です。ツバメに似た飛び方をしますが、ツバメ科とは別の仲間。日本では主に春と秋の渡りの途中に見られ、南西諸島などでは繁殖も知られています。
見分けるときは、褐色の体、飛んだときの白い腰、翼の裏の赤褐色に注目しましょう。夏羽では、クリーム色の喉を囲む黒い線も目印です。幼鳥や冬羽は顔の模様が淡くなるため、色だけでなく翼・尾の形も合わせて確認します。
| 分類 | チドリ目ツバメチドリ科 |
|---|---|
| 学名・英名 | Glareola maldivarum / Oriental Pratincole |
| 全長 | 約24~26cmが目安。資料によって数値に幅がある |
| 主な特徴 | 褐色の体、白い腰、長くとがった翼、二股の尾、赤褐色の翼下面 |
| 日本での渡り | 主に旅鳥。一部地域では夏鳥として繁殖する |
| 見られる時期 | 春と秋の渡り期が中心。おおむね4~5月、8~9月が一つの目安で、地域差がある |
| 食べ物・鳴き声 | 主に昆虫。「クリリ、クリリ」などと鳴く |
ツバメチドリとは?ツバメに似た姿のチドリ目の鳥

ツバメチドリは、地上で休む姿と、軽やかに飛び回る姿の両方を見せる野鳥です。漢字では「燕千鳥」と書きます。名前の「ツバメ」は、二股に分かれた尾や、長い翼で素早く飛ぶ姿に由来します。
分類はチドリ目ツバメチドリ科です。身近なツバメはスズメ目ツバメ科なので、名前や飛び方は似ていても、分類上は異なります。また、コチドリなどの「チドリ科」とも科が分かれています。
大きさは全長約24~26cmが目安で、全長約17cmのツバメより大きな鳥です。ただし、遠くを飛ぶ鳥の大きさは距離で印象が変わるため、体の色や翼の形と組み合わせて判断しましょう。
ツバメチドリの特徴|喉・腰・翼の裏が見分ける目印

成鳥の夏羽は、喉を囲む黒い線と赤い嘴の付け根を見る
成鳥の夏羽は、頭から背中が灰褐色~褐色で、喉は淡いクリーム色です。目の下から喉のまわりを細い黒線が囲み、顔にくっきりした模様が現れます。短い嘴は黒く、付け根に赤色が見えます。
横向きや斜め前から見られるなら、まず喉の黒線、次に嘴の付け根を確認します。お腹は白く、地面に伏せていると褐色の背中が周囲の土になじんで見えることもあります。
飛翔時は、白い腰と赤褐色の翼下面に注目
飛ぶと長くとがった翼が目立ち、尾は二股に分かれています。向きを変えて背中側が見えたときは、尾の付け根にある白い腰が手がかりです。下から見ると、翼の付け根寄りの下面に赤褐色の部分が見えます。翼の先は黒っぽく、翼全体が赤いわけではありません。
「とがった翼+二股の尾+白い腰+赤褐色の翼下面」を組み合わせると、顔が見えない場面でも候補を絞れます。逆光や遠距離では色がわかりにくいため、旋回して光の当たり方が変わる瞬間を待つと確認しやすくなります。
ツバメチドリの幼鳥と冬羽の見分け方

幼鳥は背中や翼の羽縁が淡く、模様のある印象になる
幼鳥は、背中や肩、翼を覆う羽の縁が淡い色で、羽の先近くに暗い模様が見られます。そのため、成鳥よりも背中や翼がうろこ状、あるいはまだらに見えることがあります。頭の細かな斑や胸の模様も確認したい部分です。
成鳥夏羽のような喉の黒い輪ははっきりせず、嘴の付け根の赤色も目立ちません。「喉の黒線がない」だけで幼鳥と決めず、背中や翼に幼羽の模様が残っているかを確かめましょう。
冬羽は喉の黒線が不明瞭になる。淡い顔だけでは幼鳥と区別できない
成鳥も冬羽になると、喉を囲む黒線が途切れて不明瞭になり、嘴の赤色が目立ちにくくなります。夏羽よりも落ち着いた顔つきになるため、幼鳥と似て見えることがあります。
| 羽の状態 | 顔・嘴 | 背中・翼を見るポイント |
|---|---|---|
| 成鳥の夏羽 | 喉の黒線と、嘴の付け根の赤色が明瞭 | 幼鳥のような淡い羽縁の模様は目立たない |
| 幼羽の残る幼鳥 | 喉の黒線が不明瞭。嘴の赤色も目立たない | 淡い羽縁や暗い斑が、うろこ状・まだらに見える |
| 冬羽 | 喉の黒線が途切れるなどして薄れ、嘴も黒っぽい | 換羽後の若い個体と成鳥はよく似る |
若い個体は幼羽から換羽すると、成鳥の冬羽によく似た姿になります。年齢の判断には、残っている幼羽などの細部が必要です。遠い個体や不鮮明な写真では、まずツバメチドリかどうかを確かめ、年齢は無理に断定しないほうが確実です。
なお、「冬羽」は羽の状態を表す言葉です。秋の渡りの時期にも冬羽への変化が進むので、見た季節と羽の名前を分けて考えると混乱を防げます。
オスとメスはよく似ている
ツバメチドリは雌雄の配色がよく似た鳥です。繁殖羽ではオスの目先の黒色や喉の色がより明瞭な傾向がありますが、光の当たり方、換羽、個体差も影響します。一羽を短時間見ただけで、性別まで判断するのは難しいことがあります。
ツバメチドリとツバメ・コチドリ・コアジサシの違い

ツバメとの違いは、体の色・大きさ・白い腰
ツバメチドリとツバメは、どちらも空中で虫を捕まえます。飛び方だけで迷ったときは、背中と喉の色、腰の白さを見比べましょう。
| 比べるところ | ツバメチドリ | ツバメ |
|---|---|---|
| 分類 | チドリ目ツバメチドリ科 | スズメ目ツバメ科 |
| 全長の目安 | 約24~26cm | 約17cm |
| 背中 | 褐色~灰褐色 | 青い光沢のある黒色 |
| 喉 | 夏羽はクリーム色で、周囲に黒線 | 赤褐色。その下の胸に黒い帯 |
| 腰 | 白い | 黒っぽい |
| 巣 | 開けた地面につくる | 軒下などに泥でつくる |
赤褐色の喉や青黒い背中が見えたら、ツバメの特徴・鳴き声と見られる季節も確認してみてください。
また、イワツバメも腰が白いため、「白い腰が見えたからツバメチドリ」とは決められません。背中の色や体格、翼下面も合わせて見ます。ツバメ類の候補を整理するには、ツバメとイワツバメの違いが役立ちます。
コチドリとの違いは、黄色い目の輪と長い翼
地面にいる姿で迷った場合、コチドリの成鳥は黄色いアイリングと、夏羽の黒い胸帯が目印です。全長は約16cmで、ツバメチドリより小型です。ツバメチドリは長い翼と二股の尾を持ち、空中で虫を追う動きも識別の助けになります。
顔の模様が淡い個体も含めて比べるなら、コチドリの見分け方と幼鳥の特徴をご覧ください。
コアジサシとの違いは、体の色と餌の捕り方
長い翼で水辺を飛ぶ鳥として、コアジサシと迷うこともあります。コアジサシは全体に白っぽく、夏羽の成鳥では黒い頭と白い額、先端が黒い黄色の嘴が目立ちます。主に小魚を狙って水面へ飛び込む行動も、空中の虫を追うツバメチドリとの違いです。
白っぽい鳥が水面へ飛び込んでいたら、コアジサシの特徴・鳴き声とアジサシとの違いも参考になります。
ツバメチドリはいつ日本に来る?春と秋の渡来時期

日本では主に、渡りの途中に立ち寄る「旅鳥」として見られます。観察の目安は春の4~5月ごろ、秋の8~9月ごろです。ただし全国共通の出現期間ではなく、地域や年によって前後し、6月や10月などの記録もあります。
たとえば、日本野鳥の会京都支部が掲載する主に2000~2015年の月別記録は8~9月に多く、愛媛県のレッドデータブックには4月下旬~10月上旬の観察記録が紹介されています。同じ日本でも、記録の多い時期には地域差があります。
旅鳥と夏鳥の両方に当てはまる理由
春秋の通過個体のほか、日本で繁殖する個体もいます。国内の繁殖は局地的で、南西諸島などで知られるほか、西日本や関東以南にも過去の繁殖記録があります。春から夏に見かけても、その個体がその場所で繁殖しているとは限りません。
越冬地は東南アジアやオーストラリアなどです。日本の多くの地域では、冬にふつうに見られる鳥ではありません。「冬羽のツバメチドリ」という記録も、秋に観察された個体である可能性があります。
ツバメチドリはどこにいる?農耕地や河原の開けた環境

ツバメチドリが利用するのは、乾いた畑、草の少ない農耕地、埋立地、砂や礫のある河川敷などです。干潟や水辺の周辺にも現れますが、探すときは水面だけでなく、土が露出した場所や草丈の低い場所にも目を向けます。
地上では周囲の色にまぎれやすいため、一羽ずつ形を探すより、飛び立ちや着地の動きを手がかりにすると見つけやすくなります。
- 開けた農地や河原を見渡し、素早く旋回する鳥を探す。
- 翼の形と腰の白さを確認し、降りた位置を覚える。
- 地上で休む姿を双眼鏡で確かめ、喉や羽の模様を見る。
飛んでいる姿と地上の姿を続けて観察できると、体の色だけではわかりにくかった特徴がつながります。鳥がわからなかったときは、野鳥一覧から特徴・鳴き声・見分け方を調べることもできます。
ツバメチドリの鳴き声と食べ物

鳴き声は「クリリ、クリリ」など。姿と合わせて確認する
ツバメチドリは「クリリ、クリリ」と聞こえる声で鳴きます。飛びながら声を出すことがあり、姿を見つける前に声で気づく場合もあります。短い声や震えるような声などがあるため、文字で表した一種類の声だけに当てはめないことが大切です。
鳴き声の印象はアジサシ類と似て聞こえることもあります。声がしたら上空を見て、褐色の体や長い翼、白い腰が確認できるかを合わせて判断しましょう。
食べ物は主に昆虫。空中でも地上でも捕まえる
主な食べ物は昆虫です。飛んでいる虫を追い、向きを変えながら空中で捕まえます。地面を走って昆虫を捕ることもあり、いつも飛びながら採餌するわけではありません。
ツバメのように空中で虫を捕る一方で、開けた地面に降りて過ごすところに、ツバメチドリらしい暮らしが表れています。
ツバメチドリの巣・卵・ヒナ|日本では出会う機会の少ない鳥

巣は草の少ない開けた地面につくります。地面の浅いくぼみを使う簡素な巣で、卵は一腹2~4個。ツバメが軒下に泥の巣をつくるのとは、営巣のしかたが異なります。
抱卵期間は17~18日ほどで、ヒナはふ化して早い段階で巣を離れて歩きます。自分で歩けるヒナでも、すぐに飛べるわけではありません。
日本では各地で毎年ふつうに出会える鳥ではなく、渡来数や繁殖場所は限られます。環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)と評価されています。繁殖や渡りの途中に利用する、草の少ない開けた環境の減少などが課題になっています。
ツバメチドリについてよくある質問

ツバメチドリはツバメの仲間ですか?
ツバメチドリはチドリ目ツバメチドリ科で、スズメ目ツバメ科のツバメとは分類が異なります。長い翼と二股の尾を持ち、空中で昆虫を捕る姿が似ています。
ツバメチドリの幼鳥は、どこを見ればわかりますか?
幼羽が残っていれば、背中や翼の淡い羽縁、頭や胸の細かな模様が手がかりです。喉の黒線や嘴の赤色が薄いだけでは、成鳥の冬羽と区別できません。
秋に見たツバメチドリは、すべて幼鳥ですか?
すべてが幼鳥とは限りません。秋には成鳥も見られ、換羽中の個体もいます。時期だけで判断せず、背中や翼の羽の模様を確認しましょう。
ツバメチドリは日本で繁殖しますか?
南西諸島などで局地的に繁殖します。本州や四国、九州にも繁殖記録がありますが、日本全体では主に渡りの途中に見られる鳥です。
ツバメチドリは冬にも見られますか?
日本の多くの地域では冬の通常の観察対象ではなく、主に春秋の渡り期に見られます。越冬地は東南アジアやオーストラリアなどで、冬羽の個体が秋に観察されることもあります。
参考資料



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