トラフズクは、日本では本州以北の林で繁殖し、秋冬には暖かい地域へ移動するフクロウの仲間です。関東や西日本で探すときは、冬の木立と、その周囲の草地・農耕地が手がかりになります。
見分ける目印は、長い羽角(耳のような羽)・橙色の目・胸や腹の黒褐色の縦模様。成鳥は「ウーウ」「オーオー」と聞こえる低い声で鳴き、幼鳥は高い声で餌をねだります。
この記事では、日本での生息地、見られる時期と時間帯、昼間の探し方、鳴き声、コミミズクとの違いを順に紹介します。

トラフズクは日本のどこにいる?生息地と環境
日本ではほぼ全国に記録がありますが、繁殖する地域と冬に見られる地域は異なります。主な繁殖地は北海道や本州北部の平地・低山地の林。秋冬になると、温暖な地域へ移動する個体が見られます。

昼ねぐらは枝葉の密な木立、狩り場は開けた土地
トラフズクの暮らしを考えるときは、「休む場所」と「餌を捕る場所」をセットで見ると分かりやすくなります。昼間は姿を隠せる林や藪で休み、夜は草地や農耕地などで小動物を探します。
| 時間帯・行動 | 環境の目安 | 注目する点 |
|---|---|---|
| 昼間の休息 | 常緑樹や針葉樹などの木立、密な藪 | 枝葉の内側に体を隠せるか |
| 夜の採食 | 草地、農耕地、林の縁など | 小型哺乳類が暮らす開けた場所があるか |
関東のフクロウ類を広く知りたい方は、関東で見られる野生のフクロウ4種類と生息環境も参考になります。
新潟での観察例:鳥屋野潟のトラフズク
当サイトには、鳥屋野潟で観察したトラフズクの記録もあります。2017年の観察記事で、枝葉に隠れた姿や後ろ姿を写真で確認できます。過去の記録と、現在の飛来状況は分けて考えましょう。
トラフズクはいつ見られる?季節と地域の違い
暖かい地域では秋から冬が中心で、繁殖地域では春から夏にも生息します。「トラフズクは冬にしかいない」と全国共通に考えると、地域ごとの違いを見落としてしまいます。
| 地域・環境 | 季節の目安 | 観察の手がかり |
|---|---|---|
| 北海道・本州北部などの繁殖地域 | 春〜夏にも生息 | 繁殖期の声、巣立ち後の幼鳥の声 |
| 関東・西日本などの越冬地 | 主に秋〜春、特に冬 | 木立で休む姿、複数羽が集まる昼ねぐら |
| 移動途中に立ち寄る環境 | 秋・春 | 短期間の滞在。継続しているとは限らない |

冬は集団ねぐらが見られることも
冬には、数羽から十数羽が同じ林や樹木で休むことがあります。枝の間に1羽見つかっても、別の枝にほかの個体が隠れている場合があります。ただし、必ず群れでいるわけではありません。
飛来時期や羽数には年ごとの違いがあるため、観察日を「毎年この月」と固定せず、その年の記録と地域の気候を確認してください。
防寒や服装の準備には、冬のバードウォッチングの服装・時期と身近な野鳥が役立ちます。
トラフズクを昼間に見つけるには?探し方の3つのコツ
昼間に見るのは、主に木の中で休んでいる姿です。目の色だけを探すより、枝葉に混じった縦長の輪郭を探すほうが、目を閉じた個体にも気づきやすくなります。

1.草地や農耕地の近くにある木立を確認する
広い林をやみくもに歩く前に、休める木立と餌場になりそうな開けた土地の位置関係を見ます。冬でも葉が残る木や、枝葉が重なる部分を、通路から静かに確認しましょう。
2.枝に紛れたシルエットを探す
肉眼で木全体を見たあと、気になる部分を双眼鏡で確認します。幹のそばにある褐色の輪郭、縦に並ぶ羽毛の模様、枝とは少し違う形が手がかりです。眠っていると目が見えず、羽角も目立たないことがあります。
3.見つけた位置から距離を保って観察する
全身が枝で隠れていても、木の下へ入り込んで見上げ続けたり、音を出して起こしたりせず、離れた位置から観察します。顔を見せるまで待ち続けるより、自然な休息の姿を短時間で見ることを基本にしましょう。
双眼鏡や服装の準備は、バードウォッチングの必需品・持ち物で確認できます。
トラフズクの鳴き声は?成鳥と幼鳥で違う
成鳥は「ウーウ」「オーオー」と聞こえる低い声、幼鳥はきしむような高い声が特徴です。声を文字にした表現は「聞きなし」と呼ばれ、同じ声でも人によって表し方が変わります。

| 声を出す鳥 | 聞こえ方の目安 | 主な場面 |
|---|---|---|
| 成鳥のオス | 低い「ウー」「ホー」のような声を、間隔を空けて繰り返す | 繁殖期の縄張り・求愛の声など |
| 幼鳥 | 「キー」と表されるような、細く高いきしみ声 | 親鳥に餌をねだる |
| 警戒時など | 鋭い声など、普段とは違う声もある | 周囲への反応、個体間のやり取り |
夜の「キー」という声だけで種類は決められる?
高い声が聞こえても、それだけでトラフズクの幼鳥とは断定できません。声の繰り返し方、季節、生息環境を合わせて考え、複数の録音例と聞き比べると理解しやすくなります。
鳴く頻度は季節や状況によって変わります。声がしないことだけで「いない」と判断することもできません。音源を確認するときは室内などで聞き、野外で鳥を呼び寄せるために再生しないようにしましょう。
成鳥や巣立ち雛の録音例は、記事末尾の参考資料にまとめた鳴き声図鑑などで確認できます。
トラフズクとコミミズクの違い・似たフクロウの見分け方
トラフズクとコミミズクは、羽角の長さと目の色を組み合わせて見分けます。どちらも全長の目安は約38cmなので、「大きく見えた」という印象だけでは区別しにくい鳥です。

| 種類 | 全長の目安 | 羽角 | 目の色 | 確認のポイント |
|---|---|---|---|---|
| トラフズク | 約38cm | 長い | 橙色〜赤みのある色 | 細身の姿、胸腹部の縦模様 |
| コミミズク | 約38cm | 短く目立ちにくい | 黄色 | 草地や河川敷などの開けた環境 |
| オオコノハズク | 約24cm | ある | 橙色 | トラフズクより小さい。目の色だけでは区別できない |
| フクロウ | 約50cm | ない | 暗色で黒く見える | 丸い頭と大きな体 |
比べる相手の特徴は、コミミズクとトラフズクの違いの比較表でも確認できます。
羽角が見えないトラフズクもいる
羽角は常に立っているとは限りません。伏せている個体は頭が丸く見えるため、羽角の有無だけで種類を決めないことが大切です。目を閉じているときは、その場で無理に識別せず、体の模様や写真に写った特徴を確認しましょう。
ほかの仲間も比較したい方は、日本のフクロウ11種類の生息地・鳴き声・見分け方へ。丸い頭のフクロウについては、フクロウの生息地・鳴き声・昼間の探し方で詳しく紹介しています。
トラフズクとは?大きさ・学名・名前の意味

| 分類 | フクロウ目フクロウ科 |
|---|---|
| 学名 | Asio otus |
| 英名 | Long-eared Owl |
| 全長 | 約38cm |
| 主な食べ物 | ネズミ類などの小型哺乳類 |
| 主な活動時間 | 夜間 |
英名の「Long-eared」は長い耳を思わせますが、頭に立つ羽は耳ではなく羽角です。「トラフ」は虎のような斑模様を表す言葉で、褐色の地に黒褐色の模様が重なる姿と結びついています。
トラフズクの特徴は?羽角・目・羽毛の模様

長い羽角と橙色の目
頭の上に伸びる2本の羽角と、橙色から赤みのある目が代表的な特徴です。実際の耳は目の横にあり、羽毛に隠れています。羽角の長さが聴力を示しているわけではありません。
胸や腹の縦模様と、枝に紛れる細身の姿
胸腹部には黒褐色の縦模様があり、背中や翼にも複雑な模様が重なります。木立の中では輪郭が分かりにくく、姿勢によって細長くも丸くも見えます。イラストは特徴をつかむ手がかりにして、実際の識別では複数の特徴を照らし合わせましょう。
オスとメスは見分けられる?
オスとメスは外見がよく似ています。メスのほうが大きい傾向がありますが、枝に止まる1羽を遠くから見ただけで、性別を確実に決めるのは難しい鳥です。羽毛の膨らみ方や姿勢による見え方も考慮してください。
トラフズクは渡り鳥?留鳥・漂鳥と呼ばれる理由
トラフズクには季節によって移動する個体がいて、日本では留鳥・漂鳥として紹介されます。同じ地域に一年を通している場合と、秋冬に暖かい地域で見られる場合があるため、地域を添えて理解することが大切です。

冬の木立から春に姿が見えなくなるのは、季節的な移動による場合があります。また、前年に使っていた木に翌年も必ず戻るとは限りません。「冬に見た場所」と「繁殖している場所」を、そのまま同じものとして扱わないようにしましょう。
トラフズクの一日|昼は休息、夕方から夜は活動

トラフズクは主に夜に活動します。日中は密な枝葉に隠れて休み、暗くなると草地などへ餌を探しに出ます。昼ねぐらで複数羽が集まっていても、そこで一緒に狩りをしているわけではありません。
夕方以降に観察する際は、施設の利用時間や通路の状況を先に確認してください。暗い林や水辺へ無理に入らず、鳥へ強い光を向けないことも大切です。
冬のタカ類なども含めて観察したい方は、冬の猛禽類の観察ポイントもあわせて読むと、環境ごとの探し方が分かります。
トラフズクは何を食べる?ネズミ類とペリット

主な食べ物はネズミ類などの小型哺乳類で、小鳥を捕らえることもあります。開けた土地の上を低く飛ぶなどして餌を探し、音も手がかりにして獲物を捕らえます。
ペリットは消化できなかった毛や骨の塊
獲物と一緒に飲み込んだ毛や骨などは、消化されずに口から塊として吐き戻されることがあります。これがペリットです。糞とは異なり、食べた動物を調べる手がかりになります。
1973年に北海道の防風林で繁殖した2巣のペリットを調べた研究では、餌動物数の約87%がエゾヤチネズミでした。これは特定の地域・時期の結果で、全国のトラフズクが同じ割合で食べるという意味ではありません。
ただし、ペリットを見つけただけで、トラフズクのものと断定することはできません。ほかのフクロウ類なども吐き出すため、鳥の姿や周囲の状況と合わせて判断する必要があります。
トラフズクは珍しい?見つけにくい理由

日本に生息する鳥ですが、普段の散歩で簡単に出会える鳥ではありません。夜行性で、昼は枝葉に隠れ、羽毛の模様も木立に紛れるためです。分布の範囲が広いことと、見つけやすいことは別に考えましょう。
木立を一度見回して何も見つからなくても、不在とは限りません。一方、過去に観察例がある場所でも、その日にいるとは限らず、無理に探し続けないことが大切です。
トラフズクの繁殖・幼鳥|巣立ち後も親が餌を運ぶ

トラフズクは、カラス類などが作った古巣を利用して繁殖することがあります。巣立ちのころには、幼鳥が巣を離れ、周囲の枝で過ごすようになります。
白っぽく柔らかな羽が残る幼鳥は、成鳥とは違う印象です。まだ十分に飛べない時期にも親の世話を受けているため、低い枝にいるだけで迷子と決めつけず、触ったり移動させたりせずに距離を取りましょう。
トラフズクを観察するときの基本マナー
日中の観察では、休息を妨げないことが基本です。姿が見える場所から、双眼鏡で静かに確認しましょう。
- 近づきすぎない:こちらを見続ける、姿勢を変えるなどの反応があれば距離を広げる。
- 枝葉を動かさない:見えない部分も、その鳥の自然な居場所として受け止める。
- フラッシュや呼び寄せの音源を使わない:眠る鳥を起こしたり、反応を引き出したりしない。
- 餌を置かない:自然な採食行動を見守る。
- 通路や施設のルールを守る:ほかの利用者の通行を妨げない。
トラフズクについてよくある質問

トラフズクは冬鳥ですか?
冬に飛来して見られる地域もありますが、日本全体では留鳥・漂鳥として紹介されます。本州以北の繁殖地と、暖かい地域の越冬地を分けて考えてください。
トラフズクは昼間に飛びますか?
昼間も飛ぶことはありますが、基本的には夜行性です。日中に木立で見つかる個体は、休息していることが多くなります。
トラフズクの耳のような羽は何ですか?
羽角という飾り羽です。本当の耳は目の横にあり、羽毛で覆われています。羽角が伏せられて見えない場合もあります。
夜に「キー」と鳴くのはトラフズクの幼鳥ですか?
候補の一つですが、声だけでは確定できません。季節と生息環境を確認し、繰り返し方や音の高さを録音例と比べてください。
トラフズクとコミミズクはどちらが大きいですか?
どちらも全長の目安は約38cmです。大きさより、長い羽角と橙色の目を持つトラフズク、短い羽角と黄色い目を持つコミミズクという違いに注目します。
まとめ|生息環境・季節・特徴を合わせて確認しよう

トラフズクを知る手がかりは、長い羽角、橙色の目、褐色の羽毛に入る縦模様です。日本では本州以北で繁殖し、秋冬には暖かい地域へ移動する個体もいます。
昼は枝葉の中で休み、夜は草地や農耕地で小動物を探します。探すときは木立と開けた環境の組み合わせを見て、見つけたら距離を保って静かに観察してください。
成鳥と幼鳥の声の違いや、コミミズクとの見分け方も合わせて覚えると、姿と声の両方から理解を深められます。
参考資料
- トラフズク|BIRD FAN(日本野鳥の会)
- トラフズク|日本の鳥百科(サントリー)
- Long-eared Owl Life History|Cornell Lab of Ornithology
- Long-eared Owl Sounds|Cornell Lab of Ornithology
- Long-eared Owl|BTO BirdFacts
- Introducing Long-eared Owls|BTO
- コミミズク|BIRD FAN(日本野鳥の会)
- オオコノハズク(フクロウ科)|小清水 花と野鳥図鑑
- フクロウ|BIRD FAN(日本野鳥の会)
- トラフズク 幼鳥の鳴き声|音のソノリティ(日本テレビ)
- バードリサーチ鳴き声図鑑|バードリサーチ
- 北海道における繁殖期のトラフズク Asio otus の食性について|山階鳥類研究所研究報告
- 野鳥撮影マナー|BIRD FAN(日本野鳥の会)



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