
クロウタドリは、笛のような澄んだ鳴き声でさえずる、全長約28〜29cmのツグミの仲間です。成鳥のオスは腹まで黒っぽく、橙黄色のくちばしと目の周りの輪が目立ちます。中国を中心に暮らす鳥で、日本では記録の少ない旅鳥・迷鳥です。
「クロウタドリの鳴き声はどんな声?」「日本でも見られる?」「クロツグミとどう違う?」という疑問に、鳴き声、国内の確認例、見分け方の順で答えます。メスや幼鳥、ニシクロウタドリとの違いもイラストで確認できます。
名前の分からない黒い鳥を見つけた方は、黒い鳥の一覧と見分け方から、体の大きさや腹の色が合う鳥を比べると候補を絞れます。
クロウタドリの鳴き声は?さえずりと地鳴きの特徴
さえずりは、よく通る澄んだ音をいくつも組み合わせた声です。同じ鳴き方だけを繰り返すとは限らず、個体によって節回しが変わります。見通しのよい枝などで歌い、日中にも聞かれます。

さえずりは「ヒョイーン」「ピーユ」のように聞こえることも
北海道豊富町の観察報告では、「ヒョイーン」「ピーユ」「キュイキュイ」と表現される、澄んだ高い声が記されています。文字にするとこのように聞こえますが、距離や周囲の音によって印象は変わります。
クロツグミのような美しい声を聞いて姿を探した結果、クロウタドリと分かった例です。声が似ていても、腹の色やくちばしを確認することが識別につながります。
地鳴き・警戒声は、さえずりと違って短い
| 声の種類 | 聞こえ方の目安 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| さえずり | 澄んだ笛のような音をつなぐ。節回しには個体差がある | 枝や見通しのよい止まり場にいる鳥の姿 |
| 警戒時の声 | 鋭い叫び声や、「ワック」のような短い声の連続 | 声の主が移動した先と、全身の色 |
| 短い地鳴き | 「チッ」「チュー」のような単音や短い連続音 | 周囲のツグミ類との違い |
短い声だけでは鳥の種類を決めにくいため、鳴いた方向を見て姿を確かめます。似たさえずりとの比較には、クロツグミの鳴き声と特徴も役立ちます。クロウタドリの録音を確認する場合は、記事末尾の香港の鳥類図鑑やeBirdのページも参考になります。
クロウタドリは日本にいる?生息地と国内の確認記録
日本でも確認されていますが、普通に見られる鳥ではありません。琉球列島や離島などに少数が渡来し、本州などでも迷鳥として記録されています。「記録がある地域」と「毎年見られる生息地」は区別して考える必要があります。

日本の確認例:広島県の3月と北海道の6月
国内の様子を具体的に知るには、日付と観察内容が記された報告が参考になります。ここでは、論文で確認できる2例を紹介します。
| 地域 | 確認時期 | 観察された様子 |
|---|---|---|
| 広島県三次市 | 2024年3月15日頃〜27日 | 田園地帯の休耕田でオスを確認。約2週間の滞在が報告された |
| 北海道豊富町 | 2019年6月22〜28日 | 公園の木々でさえずり、樹上や芝生で採食するオスを確認した |
これらは過去の観察記録で、現在の滞在情報ではありません。3月の地上採食と6月のさえずりという異なる場面が記録されており、季節や行動だけで候補から外さないことが大切です。
世界の主な分布と好む環境
主な繁殖分布は中国です。一部の個体は南へ移動し、香港では秋の渡りや冬に多く観察されます。林の縁、公園、庭園、農地などを利用し、芝生や畑でミミズなどを探す姿が見られます。
海外では身近な都市の鳥として紹介されることもありますが、その頻度を日本に当てはめることはできません。日本の庭で見た鳥を調べたい場合は、庭に来る鳥の一覧も比較すると、よく似た身近な鳥を見つけやすくなります。
クロウタドリが日本で見られる時期は?春秋以外の記録もある
日本では記録が少なく、全国共通の「見頃」を決められる鳥ではありません。春や秋の渡りを意識しつつ、冬の渡来や初夏の確認例も含めて考えます。

- 春:広島県では3月の確認例があります。渡りの途中に現れる鳥を観察するときも、腹や顔の特徴を確認します。
- 初夏:北海道では6月下旬にさえずる個体が記録されています。夏に聞いたツグミ類の声も、姿まで確かめましょう。
- 秋・冬:東アジアでは季節移動が見られ、日本の古い記録資料にも少数の旅鳥・冬鳥としての渡来が記されています。全国に多く渡ってくるツグミとは、出現の頻度が違います。
「冬に地面で餌を探していた」「公園にいた」という条件だけなら、シロハラやツグミなども候補になります。ツグミとシロハラの違いを知っておくと、観察した鳥の整理に役立ちます。
クロウタドリの特徴と見分け方|黒い体・黄色いくちばし・暗い脚
成鳥オスは「腹まで暗色」「橙黄色のくちばし」「黄色いアイリング」「黒褐色の脚」を組み合わせて見ます。アイリングとは、目の周りを囲む輪のことです。

全長は約28〜29cm。ツグミより一回り大きい
日本でよく見られるツグミは全長約24cm、クロツグミは約22cmです。クロウタドリはそれらより大きいツグミ類です。ただし、遠くの鳥や写真1枚から大きさを正確に判断するのは難しいため、近くにいる鳥との比較を補助に使います。
観察するときは、腹から顔、脚の順に見る
- 腹を見る:成鳥オスは胸から腹も黒〜黒褐色。白い腹に黒斑があるならクロツグミなどを比べます。
- 顔を見る:くちばしが橙黄色か、目の周りに黄色い輪があるかを確かめます。
- 脚を見る:脚は黒っぽい褐色。くちばしだけで判断すると、ムクドリなどと取り違えることがあります。
- 体形と動きを見る:ツグミ型の体で、地面に降りて餌を探します。飛んだ先や止まり方も記録します。
逆光では羽も顔も黒くつぶれて見えます。明るい場所に出たときの横向きと正面の姿を確認できると、腹の模様やくちばしの色を判断しやすくなります。
クロウタドリとクロツグミの違いは?ムクドリ・カラスとも比較
クロツグミとの比較では、成鳥オスの白い腹と黒い斑点の有無が分かりやすい違いです。どちらも黒っぽく、黄色いくちばしが目立つため、顔だけで決めず腹まで見ましょう。

| 鳥 | 全長の目安 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| クロウタドリ | 28〜29cm | 成鳥オスは腹まで暗色。橙黄色のくちばしとアイリング、暗い脚 |
| クロツグミ | 約22cm | 成鳥オスは黒い上面と、白い腹の黒斑。日本では主に夏鳥 |
| ムクドリ | 約24cm | 頬の白い部分、短めの尾、橙色の脚。腰の白も手掛かり |
| カラス類 | クロウタドリよりかなり大きい | 太い黒いくちばしと黒い脚。体の大きさも異なる |
クロツグミとの違い:オスは腹、メスは模様を見る
クロツグミの成鳥オスは、黒い背中と白い腹の対比がはっきりしています。メスは褐色で、下面の黒い斑点も手掛かりです。クロウタドリのメスも褐色ですが、白い腹に並ぶクロツグミの斑点とは見え方が異なります。
雌雄の特徴や声を詳しく比べる場合は、クロツグミのオス・メスと見分け方へ。日本での生息環境を調べたい方は、クロツグミの生息地と探し方も参考になります。
ムクドリとの違い:白い頬と橙色の脚
ムクドリも暗色の体と明るいくちばしを持ちますが、頬に白い部分があり、脚は橙色です。クロウタドリの暗い脚と比べると違いをつかみやすくなります。群れにいることだけでは決められないため、1羽ずつ顔と脚を見ます。
ムクドリの特徴・幼鳥の見分け方では、身近に見られるムクドリを確認できます。地上にいる鳥を比べたい場合は、ムクドリとツグミの違いもどうぞ。
カラスとの違い:大きさとくちばしの色
クロウタドリはカラスの仲間ではありません。カラス類より小さく、成鳥オスのくちばしは橙黄色です。大きな体と黒いくちばしが見えた場合は、ハシボソガラスの特徴やハシブトガラスの特徴と比較してください。
シロハラとの違い:褐色の鳥は腹の明るさも確認
暗い林内でメスを見た場合には、褐色のシロハラも比較候補になります。シロハラは下面が白っぽく見える鳥です。全身の色に加え、喉と腹の模様を見比べます。詳しくはシロハラの特徴と鳴き声をご覧ください。
クロウタドリのオス・メス・幼鳥の違い
オスは黒っぽく、メスは褐色味があり、幼鳥には淡い斑や筋が見られます。雌雄の色の差が小さい個体もいるため、「黒いから必ずオス」「茶色いから必ずメス」とは決められません。

成鳥オス:黄色い顔の部分が目立つ
頭や背、腹まで黒〜黒褐色です。くちばしは橙色から明るい黄色で、目の周りの細い輪も黄〜橙黄色。日差しが当たると褐色味が見えることもあります。
成鳥メス:喉の色と筋模様も手掛かり
オスより褐色味があり、顎や喉がやや淡く、濃い筋模様が見られます。アイリングもオスほど明瞭ではありません。暗い場所では差が分かりにくいため、顔だけでなく喉や翼も確認します。
幼鳥・若い鳥:斑や羽の色の差を確認
幼鳥は暗い褐色で、顔や下面に淡い斑・筋が出ます。若いオスでも翼に褐色が残り、くちばしの黄色が弱い場合があります。成鳥オスの特徴が全部そろわない鳥もいることを覚えておきましょう。
褐色の鳥を広く比べたい方は、茶色い鳥の一覧と見分け方で、大きさや胸・腹の模様が似た鳥を探せます。
クロウタドリとは?学名・英名とニシクロウタドリとの違い

| 名前 | クロウタドリ |
|---|---|
| 学名 | Turdus mandarinus |
| 英名 | Chinese Blackbird |
| 分類 | スズメ目・ツグミ科・ツグミ属 |
| 全長 | 約28〜29cm |
| 日本での扱い | 記録の少ない旅鳥・迷鳥など |
ヨーロッパの「Blackbird」は別種として扱われる
ヨーロッパなどに暮らすニシクロウタドリの学名はTurdus merulaです。以前は東アジアの個体群も同じ種に含める分類が使われ、日本の古い資料でもこの学名で「クロウタドリ」が紹介されることがあります。
現在の東アジアのクロウタドリを調べるときは、和名だけでなく、学名がTurdus mandarinusか、紹介されている分布がどこかを確認すると、海外の情報との混同を減らせます。本記事ではChinese Blackbirdを中心に扱っています。
クロウタドリの食べ物は?ミミズ・無脊椎動物・果実を食べる
クロウタドリは、地面のミミズなどの無脊椎動物と果実を食べる雑食性の鳥です。芝生や畑で地面を調べ、ミミズを引き抜いて食べる姿が見られます。

樹上で果実を食べることもあります。北海道の観察例では樹木と芝生の両方で採食しており、ムクドリと同じ芝生で餌を探す場面も報告されています。
地面にいる鳥だけを探していると、樹上に移動した個体を見失うことがあります。採食した場所と飛んだ先を合わせて見ると、観察を続けやすくなります。
クロウタドリの繁殖・巣・卵|主な分布域での子育て
主な分布域では、公園や人家周辺などでも繁殖します。香港では3月下旬から巣作りが始まり、5月下旬から9月上旬に幼鳥が確認されています。これらは香港での観察であり、日本の繁殖カレンダーではありません。

巣は椀形で、卵を温めるのはメスです。中国江西省の都市と農村で行われた繁殖研究では、一腹卵数の平均は約5個で、雌雄がヒナに餌を運ぶ様子も調べられています。卵数は一律ではなく、研究された個体群の値として見るのが適切です。
日本の古い報告資料には、石川県金沢市で1997年と1999年にメスが巣を作り、抱卵した例も記されています。ただし、造巣・抱卵の記録だけで、その地域に毎年繁殖する個体群があるとは言えません。
クロウタドリの探し方・観察と撮影のコツ
公園や林縁で暗色のツグミ類を見つけたら、まず腹、くちばし、目の周り、脚を確認します。日本では珍しい鳥なので、1つの特徴だけで判断せず、いくつかの特徴を記録しましょう。

声が聞こえたら、枝と地面を順に探す
よく通るさえずりが聞こえたときは枝の上を、低い位置から短い声が聞こえたときは低木の周辺や地面も見ます。姿が見えたら、声の印象だけでなく腹の色を確認してください。
写真は全身・横向き・腹の模様を残す
顔のアップに加え、体の大きさが分かる全身、腹が見える正面、脚が写る横向きがあると識別に役立ちます。観察した日付、地域、個体数、採食やさえずりなどの行動も一緒にメモしておくと、後から確認しやすくなります。
双眼鏡などの準備はバードウォッチングの持ち物で確認できます。急に近づかず、鳥が見やすい場所へ出るのを待つと、自然な姿も観察しやすくなります。
クロウタドリについてよくある質問

クロウタドリは日本では珍しい鳥ですか?
はい。国内では記録の少ない鳥です。琉球列島や離島などへの少数の渡来、本州や北海道などでの確認例がありますが、全国の公園で普通に見られる鳥ではありません。
クロウタドリとクロツグミは同じ鳥ですか?
別の鳥です。成鳥オスを比べると、クロウタドリは腹まで暗色、クロツグミは白い腹に黒い斑点があります。クロウタドリの方が大きいことも手掛かりです。
クロウタドリのメスも黒いですか?
メスも暗色ですが、オスより褐色味があります。喉がやや淡く、濃い筋模様が見られることもあります。個体差や光の条件によって、雌雄の色の差が小さく見える場合があります。
黒い体で黄色いくちばしならクロウタドリですか?
それだけでは決められません。クロツグミやムクドリなども比較します。腹が白いか、頬が白いか、脚が橙色かを順に確認すると見分けやすくなります。
クロウタドリはカラスの仲間ですか?
ツグミの仲間です。カラス類より小さく、成鳥オスの橙黄色のくちばしとアイリングが特徴です。
日本でクロウタドリが鳴くのは春だけですか?
春だけではありません。北海道では6月下旬にさえずる個体が記録されています。日本の少数の記録から、さえずりを聞ける月を一律に決めることはできません。
英語のBlackbirdを調べればクロウタドリが分かりますか?
Chinese Blackbird、学名Turdus mandarinusを目印に調べると確実です。Blackbirdだけでは、ニシクロウタドリなど別の鳥の情報が出ることがあります。
クロウタドリを見つけたら、鳴き声と腹・顔・脚を確認しよう

クロウタドリは澄んださえずりを持つ大型のツグミ類です。日本では記録が少ないものの、3月の広島県、6月の北海道など、具体的な確認例があります。
暗色のツグミ類を見つけたら、腹の色、橙黄色のくちばし、目の周りの輪、暗い脚を確認しましょう。成鳥オスだけでなく、褐色のメスや模様のある幼鳥の特徴も知っておくと、見慣れない鳥に出会ったときに役立ちます。
似た鳥をさらに比べたい方は、似ている野鳥の見分け方一覧へ。色・大きさ・見た場所から探すなら、特徴から野鳥の名前を調べるも使えます。
参考資料
- Chinese Blackbird – eBird
- Chinese Blackbird – The Avifauna of Hong Kong
- 広島県で初確認されたクロウタドリ
- 豊富町におけるクロウタドリの観察記録
- クロツグミ – BIRD FAN(日本野鳥の会)
- ムクドリ – BIRD FAN(日本野鳥の会)
- シロハラ – BIRD FAN(日本野鳥の会)
- ツグミ – BIRD FAN(日本野鳥の会)
- Extra-pair paternity enhances the reproductive fitness of urban Chinese blackbird
- A highly effective incubation strategy enhanced the urban bird hatch success


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