
ヘラサギは、全身が白く、先端が丸く広がった「へら」のようなくちばしを持つ大型の水鳥です。
日本では主に冬に見られる渡り鳥ですが、飛来する数は少なく、全国の水辺で普通に見られる鳥ではありません。そのため、野外で出会えたらとても幸運な野鳥のひとつといえるでしょう。
名前には「サギ」と入っていますが、ダイサギやコサギなどのサギ科ではなく、分類上はトキ科に含まれます。白い体と長い脚だけを見るとサギ類に似ていますが、くちばしの形、食べ物の探し方、飛ぶときの姿などには大きな違いがあります。
また、日本にはヘラサギとよく似たクロツラヘラサギも飛来します。どちらもへら状のくちばしを持っており、同じ場所や同じ群れで見られることがあるため、初心者には見分けるのが難しい場合があります。
この記事では、ヘラサギとはどのような鳥なのか、日本ではどこにいるのか、見られる季節、特徴、鳴き声、食べ物、渡り、クロツラヘラサギとの違い、初心者向けの探し方まで詳しく解説します。
ヘラサギとはどんな鳥?

ヘラサギは、トキ科ヘラサギ属に分類される大型の水鳥です。
和名はヘラサギ、学名は「Platalea leucorodia」、英名は「Eurasian Spoonbill」と呼ばれます。英名に含まれる「Spoonbill」も、スプーンのように先端が広がったくちばしを表した名前です。
全長は約85~86cmあり、ダイサギと比べても大きく見える鳥です。体は全体的に白く、長い首、長い黒い脚、黒っぽいへら状のくちばしを持っています。成鳥では、くちばしの先端に黄色い部分が見られるのも特徴です。
日本では主に冬鳥として少数が渡来します。秋になると姿を見せ始め、冬を日本の水辺で過ごしたあと、春には繁殖地へ向かって移動します。ただし、毎年同じ場所に必ず飛来するわけではなく、年によって見られる地域や個体数が変わります。
ヘラサギはサギの仲間ではない
ヘラサギという名前を聞くと、多くの人はダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギなどと同じサギの仲間だと思うでしょう。
しかし、ヘラサギはサギ科ではありません。分類上はトキ科に含まれ、クロツラヘラサギやトキに比較的近い鳥です。
サギ類と同じように長い脚で浅い水辺を歩き、魚やカエルなどを食べるため、遠くから見ると似ています。しかし、サギ類のくちばしは細く尖っているのに対して、ヘラサギのくちばしは平たく、先端が丸く広がっています。
採食方法にも違いがあります。サギ類は獲物を目で探し、尖ったくちばしを素早く突き出して捕まえることが多い鳥です。一方、ヘラサギはくちばしを水中に入れ、頭を左右に振りながら、くちばしに触れた小動物を挟み取ります。
飛び方も重要な違いです。サギ類は飛ぶときに首をS字状に縮めますが、ヘラサギは首を前へ伸ばして飛びます。
白いサギ類についても知りたい方は、コサギの特徴や生息地を紹介した完全ガイドや、アオサギの特徴を詳しく紹介した記事もあわせてご覧ください。
ヘラサギの名前の由来

ヘラサギの「ヘラ」は、くちばしの形に由来します。
横から見ると長く平たい形をしており、上や正面から見ると先端が丸く広がっています。その形が料理などに使われる「へら」や「しゃもじ」に似ていることから、ヘラサギと呼ばれるようになりました。
「サギ」の部分は、長い首と脚を持ち、水辺で生活する姿がサギ類に似ていることに由来すると考えられます。
つまり、ヘラサギという名前は「へらのようなくちばしを持つ、サギに似た鳥」という見た目を表したものです。
初心者が野外で識別するときも、まずは白い体より、くちばしの形に注目すると見つけやすくなります。
ヘラサギの特徴

ヘラサギは全身が白いため、遠くから見るとダイサギなどの白いサギ類に見えることがあります。
しかし、双眼鏡で落ち着いて確認すると、ヘラサギにしか見られない特徴がいくつもあります。
全身が白い大型の水鳥
ヘラサギの体は、基本的に全身が白色です。
長い首と脚を持ち、浅い水辺をゆっくり歩きます。首を伸ばしていると細長い鳥に見えますが、ダイサギなどと比べると胴体には厚みがあり、ややがっしりした印象があります。
全長は約85~86cmで、日本で見られる水鳥の中でもかなり大型です。カモ類と一緒にいると、体の大きさがよくわかります。
ただし、野外では鳥までの距離や立っている位置によって大きさが違って見えます。大きさだけでヘラサギと判断せず、くちばし、顔、脚、動きもあわせて確認しましょう。
日本で見られるほかの白い野鳥と比較したい場合は、日本で見られる白い鳥たちも参考になります。
先端が広がったへら状のくちばし
ヘラサギの最大の特徴は、長く平たいくちばしです。
成鳥のくちばしは全体的に黒っぽく、先端部分が丸く広がっています。広がった部分には黄色い斑があり、近い距離や条件のよい光で観察すると目立ちます。
ダイサギやコサギのくちばしは、先端に向かって細く尖っています。白い大型の水鳥を見つけたら、最初にくちばしの先が丸く広がっていないか確認しましょう。
休んでいるときは、くちばしを背中の羽毛に差し込んでいることがあります。その場合は最大の識別点が隠れてしまうため、すぐに種類を決めず、鳥が顔を上げるまで静かに待つことが大切です。
長く黒い脚
ヘラサギの脚は長く、黒っぽい色をしています。
長い脚は、干潟、河口、池、湿地、水田などの浅い水辺を歩くのに適しています。水深が深くなりすぎると歩きながら採食できなくなるため、ヘラサギは足が届く程度の浅瀬を好みます。
飛び立つと、黒い脚を尾の後ろへまっすぐ伸ばします。白い体に対して黒い脚が目立つため、飛翔中の識別材料にもなります。
飛ぶときは首を伸ばす
ヘラサギは飛ぶとき、長い首を前へ伸ばします。
この飛び方は、首を縮めて飛ぶダイサギやアオサギとの重要な違いです。遠くを飛んでいてくちばしの形が確認できない場合でも、首を伸ばしているかどうかが識別の手掛かりになります。
飛翔時は首とくちばしを前へ、脚を後ろへ伸ばすため、体の前後に細長く伸びた姿になります。翼は大きく幅広く、ゆったりと羽ばたきます。
ただし、首を伸ばして飛ぶ白い大型鳥には、コウノトリなどもいます。ヘラサギは全身がほぼ白く、コウノトリのように翼の広い範囲が黒くならないことも確認しましょう。
ヘラサギの夏羽と冬羽の違い

ヘラサギは一年中まったく同じ姿をしているわけではありません。
繁殖期に近づくと、頭や胸に変化が現れます。日本では冬の姿を見る機会が多いものの、春まで滞在した個体では夏羽に近づいた姿が観察されることがあります。
冬羽の特徴
日本で一般的に観察されるのは冬羽です。
冬羽では全身が白く、後頭部の飾り羽は目立ちません。胸も白く、夏羽に見られる黄色みはほとんどありません。
くちばしは黒っぽく、先端部分が黄色く見えます。脚は黒く、目の前からくちばしの付け根にかけて細い暗色部がありますが、クロツラヘラサギのように目の周囲全体が黒くなることはありません。
初心者は、まず「白い顔」「黒く長いへら状のくちばし」「黒い脚」を冬羽の基本として覚えるとよいでしょう。
夏羽の特徴
繁殖期の成鳥では、後頭部に長い飾り羽が現れます。
さらに首から胸にかけて淡い黄色や黄褐色を帯び、真っ白な冬羽とは少し違った華やかな印象になります。くちばし先端の黄色い部分も目立ちます。
日本に渡来するヘラサギの多くは冬鳥のため、完全な夏羽を見る機会は多くありません。しかし、春まで滞在する個体では、後頭部の羽が伸びたり、胸に黄色みが出たりすることがあります。
白い体に淡い黄色の胸が見えたからといって、別の種類とは限りません。季節による羽色の変化も考えて観察しましょう。
ヘラサギの幼鳥と成鳥の違い

幼鳥や若鳥は、成鳥と見た目が少し異なります。
若いヘラサギでは、くちばしが成鳥のような黒色ではなく、淡い橙色や肉色を帯びて見えることがあります。また、翼の先端に灰色や黒っぽい部分が残っています。
地上にいると翼の暗色部が目立たないこともありますが、飛び立つと白い翼の先に黒っぽい羽が見えるため、年齢を判断する手掛かりになります。
幼鳥のくちばしも先端が広がっていますが、成鳥ほどはっきりとした黒色と黄色の配色になっていない場合があります。
ただし、遠くから幼鳥と成鳥を正確に見分けるのは簡単ではありません。初心者は無理に年齢を断定せず、まずはヘラサギかクロツラヘラサギか、サギ類ではないかを確認することから始めましょう。
ヘラサギとクロツラヘラサギの違い

日本でヘラサギを観察するとき、最も注意したいのがクロツラヘラサギとの違いです。
両種とも全身が白く、黒っぽい脚とへら状のくちばしを持っています。生息環境や食べ物も似ており、同じ群れに混じることもあります。
顔が白いか黒いかを確認する
最もわかりやすい違いは顔です。
ヘラサギは、くちばしの付け根から目までの間に細い黒い部分がありますが、目の周囲には白い羽毛があります。そのため、全体として顔が白く見えます。
一方、クロツラヘラサギは、くちばしの付け根から目の周囲まで黒い皮膚が広がっています。横から見ると目が黒い部分の中に入り、顔全体が黒く見えるのが特徴です。
覚え方は非常に単純です。
顔が白く見える方がヘラサギ、目の周囲まで黒く見える方がクロツラヘラサギです。
ただし、逆光、距離、鳥の向きによっては、ヘラサギの顔にも影ができて黒く見える場合があります。一瞬の印象だけで判断せず、鳥が顔の向きを変えるまで観察しましょう。
ヘラサギの方がやや大きい
一般的には、ヘラサギの方がクロツラヘラサギよりやや大きく見えます。
同じ距離で並んでいれば、ヘラサギの方が首や体が少し大きく、がっしりして見える場合があります。しかし、体の大きさには個体差があり、遠近感によっても変わるため、大きさだけで識別するのは危険です。
まず顔を確認し、次にくちばし、体格、季節による羽色を補助的に使いましょう。
群れの中を1羽ずつ確認する
ヘラサギは、クロツラヘラサギの群れに混じっていることがあります。
へら状のくちばしを持つ白い鳥の群れを見つけたら、「全部クロツラヘラサギだろう」と決めつけず、1羽ずつ顔を確認してみましょう。
目の周囲が白い個体がいれば、ヘラサギの可能性があります。群れが休んでいて顔が見えない場合は、採食を始めたり、羽づくろいをしたりするまで待つと識別しやすくなります。
クロツラヘラサギの詳しい特徴、季節、生息環境については、クロツラヘラサギの初心者向け完全ガイドで紹介しています。
ヘラサギは日本のどこにいる?

ヘラサギは日本全国で普通に見られる鳥ではありません。
主に冬鳥として少数が渡来し、海岸の干潟、河口、浅い池、湖沼、湿地、水田、ため池などで観察されます。水深が浅く、小魚やエビ、カニなどが多い場所を好みます。
日本では九州地方や沖縄地方など、西日本から南西諸島にかけて記録されることが比較的多い鳥です。一方、本州、四国、北海道でも観察記録があり、条件によっては関東地方や近畿地方などに長期間滞在する個体もいます。
過去の観察例がある都道府県としては、東京都、千葉県、埼玉県、京都府、鳥取県、岡山県、香川県、福岡県、佐賀県、長崎県、鹿児島県、沖縄県などが挙げられます。
ただし、これらは過去に観察されたことがある都道府県であり、現在も同じ場所で必ず見られるという意味ではありません。ヘラサギは飛来数が少なく、年によって渡来する地域が変わります。
毎年安定して多数が越冬する場所は限られているため、観察を計画するときは、最新の野鳥情報だけに依存せず、冬の水辺を幅広く探すことが大切です。
具体的な環境や探し方は、ヘラサギが見られる生息地と探す際のポイントでも紹介しています。
ヘラサギが好む生息地

ヘラサギを探すときは、単に広い水辺を探すのではなく、「浅い水がある場所」を意識しましょう。
干潟
干潟は、ヘラサギが利用する代表的な環境です。
潮が引くと水深の浅い場所や泥の面が広がり、小魚、エビ、カニ、貝類などの小動物が捕まえやすくなります。
ヘラサギは浅い水の中を歩きながら、くちばしを左右へ振って食べ物を探します。満潮になると採食場所が水没するため、中州や岸辺などの安全な場所へ移動して休むことがあります。
河口や浅い湾
河口は川と海の水が混ざり、多くの水生生物が集まる環境です。
砂州、泥地、浅瀬がある河口では、ヘラサギのほか、クロツラヘラサギ、サギ類、カモ類、シギ・チドリ類など多くの水鳥が見られます。
白い鳥だけを探すのではなく、水鳥の群れ全体を双眼鏡で確認すると、休んでいるヘラサギが見つかる可能性があります。
池や湖沼、ため池
ヘラサギは海辺だけでなく、内陸の池、湖沼、ため池でも見られます。
特に水位が下がり、岸辺に浅い水域や泥地が現れた場所は注目したい環境です。水深の深い中央部ではなく、岸に近い浅瀬や流れ込み付近を探しましょう。
ただし、ため池の周囲には私有地や立入禁止区域がある場合があります。柵を越えたり、農道をふさいだりせず、観察可能な場所から双眼鏡で探してください。
水田や湿地
ヘラサギが水田や湿地に飛来することもあります。
水を張った水田、収穫後に水が残った田んぼ、湿った休耕田などでは、小魚、カエル、オタマジャクシ、水生昆虫などを食べられます。
田園地帯で見られる野鳥については、日本の田んぼで観察できる主な野鳥一覧も参考にしてください。
農地は野鳥の生息地であると同時に、農家の方が仕事をする場所です。田んぼやあぜ道へ無断で入らず、公道や観察可能な場所から静かに探しましょう。
ヘラサギが見られる季節

日本でヘラサギを探すなら、基本的には秋から春が観察シーズンです。
ヘラサギは日本では主に冬鳥として見られ、秋に渡来し、冬を水辺で過ごしたあと、春になると繁殖地へ向かって移動します。
秋は渡来が始まる季節
秋になると、北方や大陸方面から南下する個体が日本の水辺に現れ始めます。
渡来直後は短期間だけ滞在し、さらに南へ移動することもあります。昨日まで見られていた個体が翌日には移動していることもあるため、秋は出会いの予測が難しい季節です。
冬は最も探しやすい季節
冬はヘラサギを観察できる可能性が最も高い季節です。
越冬に適した水辺を見つけた個体は、同じ地域に数週間から数か月滞在することがあります。クロツラヘラサギの群れと一緒に行動する場合もあるため、冬の干潟や河口ではヘラサギ類を丁寧に確認してみましょう。
冬の観察に必要な服装や基本的な探し方については、初心者向け冬のバードウォッチング完全ガイドで詳しく紹介しています。
春は夏羽に近づく姿が見られる
春になると、越冬していたヘラサギは繁殖地へ向かって移動を始めます。
出発前の個体では後頭部の飾り羽が伸びたり、胸に黄色みが現れたりすることがあります。冬の真っ白な姿とは異なるため、季節による変化を観察できる時期です。
一方、移動の時期に入ると、長く滞在していた個体が突然見られなくなることもあります。
夏に見られることはある?
ヘラサギは日本では主に冬鳥ですが、夏にまったく見られないわけではありません。
若い個体、移動の遅れた個体、繁殖地へ戻らずに残った個体などが、春以降も水辺に滞在する場合があります。ただし、夏の観察例は冬に比べて少なく、初心者が計画的に探す季節としては適していません。
初めてヘラサギを探すなら、冬を中心に考えるのがおすすめです。
ヘラサギの渡り

ヘラサギは、ヨーロッパからアジア、アフリカにかけて広い地域に分布しています。
北方や内陸部で繁殖する個体の多くは、秋になると暖かい地域へ移動し、冬を過ごします。冬にはアフリカ、インド、中国南部などへ渡る個体が知られ、日本にも一部が飛来します。
日本はヘラサギの主要な繁殖地ではありません。多くの個体にとって、日本は冬を過ごす越冬地、または渡りの途中で休息や採食をする中継地です。
渡り鳥にとって、繁殖地と越冬地だけでなく、途中で立ち寄る干潟、河口、湖沼、湿地も重要です。長い移動を続けるためには、安全に休み、十分な食べ物を得られる水辺が必要だからです。
同じ地域に毎年必ず飛来するとは限らず、その年の天候、水位、餌の量、寒波などによって移動経路や滞在場所が変わると考えられます。
そのため、「以前見られた場所だから必ずいる」と考えるのではなく、周辺の水辺を広い視点で探すことが大切です。
ヘラサギの食べ物

ヘラサギは、水辺にすむ小さな動物を食べます。
主な食べ物は、小魚、エビやカニなどの甲殻類、貝類、水生昆虫、カエル、オタマジャクシなどです。
季節や生息環境によって食べるものは変わります。干潟では小魚や甲殻類、池や水田では水生昆虫、カエル、オタマジャクシなどを捕まえることがあります。
くちばしを左右に振って食べ物を探す
ヘラサギの採食方法は非常に特徴的です。
まず、へら状のくちばしを浅い水の中に入れます。そして、少しくちばしを開いた状態で、頭と首を左右へ大きく振りながら前へ進みます。
くちばしの内側に小魚やエビなどが触れると、素早く挟み取って飲み込みます。
この動きは、遠くからでも比較的わかりやすく、ヘラサギを見つける重要な手掛かりになります。白い大型鳥が水の中でくちばしを左右へ振っていたら、ヘラサギかクロツラヘラサギの可能性が高いでしょう。
数羽が横一列に並び、同じ方向へ進みながら採食することもあります。鳥たちの動きによって逃げた小魚を、別の個体が捕まえるような場面が見られることもあります。
濁った水でも食べ物を探せる
サギ類は獲物を目で確認して捕まえることが多いのに対し、ヘラサギはくちばしに触れたものを挟み取ります。
そのため、水が少し濁っていて水中が見えにくい環境でも食べ物を探せます。先端が広がったくちばしは、水中を広い範囲で探るのに適した形といえるでしょう。
ヘラサギの鳴き声

ヘラサギは、鳴き声を頻繁に聞かせる鳥ではありません。
日本の越冬地では静かに行動していることが多く、鳴き声を頼りに見つけるのは難しい鳥です。水辺で採食しているときも、ほとんど声を出さず、黙々とくちばしを左右へ振っています。
鳴くときは、「ウフー」「ウーク」「オーク」などと表現される、低く小さな声を出すことがあります。
ただし、鳴き声の聞こえ方は、距離、風、周囲の音によって変わります。日本の野外でヘラサギを探す場合は、声を待つよりも、白い体、へら状のくちばし、左右に首を振る採食行動を手掛かりにする方が現実的です。
カモ類やサギ類が多い水辺では、周囲の鳥の声に紛れてしまうこともあります。ヘラサギは「鳴き声で見つける鳥」ではなく、「姿と動きで見つける鳥」と覚えておきましょう。
ヘラサギは珍しい鳥?

ヘラサギは、日本では珍しい鳥です。
日本全国の川、池、水田で普通に見られる鳥ではなく、毎年飛来する数も多くありません。地域によっては何年も記録がなく、突然1羽が飛来して注目を集めることもあります。
特に本州の内陸部や、普段ヘラサギ類が少ない地域では、かなり珍しい観察例になる可能性があります。
一方、世界全体ではヨーロッパ、アジア、アフリカの広い地域に分布しています。世界的な絶滅リスクの評価では低危険種に位置づけられており、世界全体でクロツラヘラサギと同じ程度に少ないというわけではありません。
つまり、「世界中でほとんどいない鳥」というより、「世界には広く分布しているが、日本へ来る個体が少ないため、日本では珍しい鳥」と考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、地域ごとのレッドデータブックでは、ヘラサギが絶滅危惧種として扱われている場合があります。評価は世界、日本全国、都道府県で異なることがあるため、「絶滅危惧種かどうか」は、どの地域の評価なのかを分けて考える必要があります。
ヘラサギの探し方

ヘラサギは飛来数が少ないため、一般的なカモやサギのように、適当な水辺へ行けば簡単に見つかる鳥ではありません。
それでも、生息環境と行動を知っておくことで、出会える可能性を高められます。
冬の浅い水辺を探す
最も重要なのは季節と水深です。
秋から春、特に冬に、干潟、河口、湿地、浅い池、水位の下がったため池、水田などを探しましょう。
深い湖の中央部ではなく、鳥が脚で歩ける浅瀬を重点的に確認します。水鳥が多く集まっている場所や、小魚が入りそうな水路の流れ込み付近も注目したい場所です。
白い大型鳥のくちばしを確認する
遠くに白い大型鳥がいたら、すべてダイサギだと決めつけないことが大切です。
双眼鏡でくちばしを確認し、先端が丸く広がっていないか見てみましょう。くちばしを背中に入れて休んでいる場合は、鳥が動き始めるまで待ちます。
白い大型鳥が歩きながら頭を左右へ振っていれば、ヘラサギ類の可能性が高くなります。
クロツラヘラサギの群れを探す
九州や沖縄など、クロツラヘラサギが飛来する地域では、群れの中にヘラサギが混じっていることがあります。
群れを見つけたら1羽ずつ顔を確認し、目の周囲が白い個体を探しましょう。遠くから群れ全体を見るだけでは見落とすことがあります。
特に休息中は、くちばしや顔を背中に入れている個体が多くなります。時間をかけて観察し、顔を上げた個体から順番に確認するのがポイントです。
潮位を確認する
海岸の干潟や河口で探す場合は、潮の満ち引きも重要です。
干潮に近づくと浅い水域が広がり、ヘラサギが採食を始めることがあります。一方、潮が引きすぎると鳥が遠くへ移動し、観察しにくくなる場合もあります。
満潮時には、周辺の安全な中州、堤防から離れた浅瀬、池などへ移動することがあります。同じ地域でも時間帯によって居場所が変わるため、一度見つからなかったからといって、その地域にいないとは限りません。
ヘラサギを観察するときのマナー

珍しいヘラサギが見つかると、できるだけ近くで見たい、きれいな写真を撮りたいと思うかもしれません。
しかし、鳥へ近づきすぎると採食や休息を妨げ、最悪の場合はその場所から飛び去ってしまいます。
遠くから静かに観察する
ヘラサギがこちらを何度も見る、歩いて離れていく、採食をやめる、首を伸ばして警戒するといった行動が見られたら、近づきすぎている可能性があります。
それ以上近づかず、ゆっくり距離を取りましょう。
双眼鏡や望遠レンズを使えば、鳥との距離を保ったまま特徴を確認できます。フィールドスコープがあると、干潟や広い池の対岸にいる個体も観察しやすくなります。
鳥の進行方向をふさがない
採食中のヘラサギは、くちばしを振りながら少しずつ前へ進みます。
先回りして鳥の正面へ回り込むと、鳥が警戒して方向を変えたり、飛び立ったりする原因になります。鳥が進んでいる方向へ立たず、十分に離れた横や後方から観察しましょう。
私有地や立入禁止区域へ入らない
水田、養殖池、ため池、農道などには、私有地や関係者以外立入禁止の場所があります。
鳥が見えていても、柵を越えたり、田んぼやあぜ道へ入ったりしてはいけません。路上駐車や農道をふさぐ行為も、地域住民や農作業の迷惑になります。
観察場所を守ることは、野鳥だけでなく、その地域で今後もバードウォッチングを続けるために欠かせません。
ヘラサギについてよくある質問

ヘラサギは日本に何羽くらい来ますか?
日本へ渡来する個体数は年によって変わり、全国の正確な数を一律に示すことは困難です。
かつて鹿児島県で数十羽の群れが越冬した記録がありますが、現在は少数の個体が各地で記録されることが多く、毎年安定して多数が見られる越冬地はほとんどありません。
ヘラサギは日本で一年中見られますか?
主に秋から春に見られる冬鳥です。
夏に残る個体が観察される可能性はありますが、日本で一年中普通に見られる留鳥ではありません。初心者が探すなら冬がおすすめです。
ヘラサギはサギの仲間ですか?
サギの仲間ではありません。
名前にサギと付いていますが、分類上はトキ科です。ダイサギやコサギはサギ科なので、別のグループに含まれます。
ヘラサギとクロツラヘラサギはどこで見分けますか?
最もわかりやすいのは目の周囲です。
ヘラサギは目の周囲が白く、クロツラヘラサギは目の周囲まで黒く見えます。くちばしの付け根だけでなく、目が黒い部分に含まれているかを確認しましょう。
ヘラサギは何を食べますか?
小魚、エビ、カニ、貝類、水生昆虫、カエル、オタマジャクシなどを食べます。
へら状のくちばしを浅い水に入れ、頭を左右へ振りながら食べ物を探します。
ヘラサギの鳴き声はよく聞けますか?
日本の越冬地では、鳴き声を聞く機会は多くありません。
低く小さな声を出すことがありますが、基本的には静かな鳥です。鳴き声よりも姿や採食行動を手掛かりに探しましょう。
ヘラサギは絶滅危惧種ですか?
世界的な評価では、現時点で低危険種に位置づけられています。
ただし、日本では飛来数が少なく、都道府県によっては地域のレッドデータブックで絶滅危惧種として扱われています。世界全体の評価と地域の評価を分けて考える必要があります。
ヘラサギは人を襲いますか?
通常、ヘラサギが人を襲うことはありません。
人との距離が近くなると、戦うのではなく歩いて離れたり、飛んで逃げたりします。逃げないからといって警戒していないとは限らないため、十分な距離を保って観察しましょう。
まとめ|ヘラサギは日本の冬の水辺で出会いたい珍しい鳥

ヘラサギは、先端が丸く広がったへら状のくちばしを持つ大型の水鳥です。
名前にはサギと付いていますが、サギ科ではなくトキ科に分類されます。全身は白く、くちばしと脚は黒っぽく、成鳥のくちばし先端には黄色い部分があります。
日本では主に冬鳥として少数が渡来し、干潟、河口、池、湖沼、湿地、水田、ため池などの浅い水辺で見られます。
食べ物は小魚、エビ、カニ、水生昆虫、カエル、オタマジャクシなどです。くちばしを水中に入れ、首を左右へ振って食べ物を探す独特の採食行動は、遠くからでも見つける手掛かりになります。
よく似たクロツラヘラサギとの違いは顔です。ヘラサギは目の周囲が白く、クロツラヘラサギは目の周囲まで黒く見えます。
ヘラサギは日本では珍しい鳥ですが、水辺を訪れたときに白い大型鳥を1羽ずつ丁寧に確認することで、思いがけず出会える可能性があります。
観察するときは近づきすぎず、鳥が安心して採食や休息を続けられる距離から、静かに見守りましょう。

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