
冬の池や湖で、全身が灰色に見える地味なカモを見かけたことはないでしょうか。
マガモのオスのような緑色の頭も、ヒドリガモのような赤褐色の顔もないため、たくさんのカモが集まっている水辺では見落としてしまうかもしれません。
その灰色のカモは、オカヨシガモのオスである可能性があります。
オカヨシガモは、日本では主に秋から春に見られる冬鳥です。湖、池、沼、河川、湿地などに飛来し、ほかのカモに交じって生活しています。
一見すると地味ですが、近くで観察すると、オスの胸や脇には非常に細かな模様が入っています。黒いくちばしや黒いお尻、翼に隠れた白い部分など、見れば見るほど美しさが分かるカモです。
この記事では、オカヨシガモとはどのような鳥なのか、日本で見られる生息地、季節、渡り、鳴き声、食べ物、オスとメスの特徴、似ているカモとの見分け方まで、バードウォッチング初心者向けに詳しく解説します。
- オカヨシガモとはどんな鳥?
- オカヨシガモという名前の意味
- オカヨシガモの特徴
- オカヨシガモのオスとメスの見分け方
- オカヨシガモのエクリプスとは
- オカヨシガモとマガモのメスの違い
- オカヨシガモとカルガモの違い
- オカヨシガモとヨシガモの違い
- オカヨシガモとヒドリガモの違い
- オカヨシガモの日本での生息地
- オカヨシガモを探しやすい環境
- オカヨシガモが見られる季節
- オカヨシガモの渡り
- オカヨシガモの鳴き声
- オカヨシガモの食べ物
- オカヨシガモの暮らしと行動
- オカヨシガモの繁殖
- オカヨシガモは珍しい鳥?
- オカヨシガモを見つけるコツ
- オカヨシガモを観察するときのマナー
- オカヨシガモについてよくある質問
- まとめ|オカヨシガモは地味な羽に繊細な美しさを持つ冬のカモ
オカヨシガモとはどんな鳥?

オカヨシガモは、カモ目カモ科ヨシガモ属に分類される水鳥です。
学名は「Mareca strepera」、英名は「Gadwall」といいます。
日本で一般的に見られるオカヨシガモの全長は約50センチです。カルガモより少し小さく、コガモよりは明らかに大きい、中型のカモと考えると分かりやすいでしょう。
日本では主に冬鳥として知られています。秋になると北方から渡ってきて、冬の間を日本の湖沼や河川などで過ごし、春になると繁殖地へ戻っていきます。
北海道や本州の一部では、春から夏にも残る個体や、少数の繁殖例があります。そのため、日本にいるすべてのオカヨシガモが冬だけ見られるわけではありません。
ただし、全国的に見ると、最も観察しやすい季節は冬です。
オカヨシガモは、水面近くの水草などを食べる「水面採食ガモ」の仲間です。水面に浮かびながらくちばしを水中へ入れたり、頭と胸を沈めてお尻を上にしたりして食べ物を探します。
カモ類の基本的な分類や見つけ方については、冬にカモ類を観察する際のポイントも参考にしてください。
オカヨシガモという名前の意味

オカヨシガモは、漢字で「丘葦鴨」と書かれることがあります。
名前に「ヨシガモ」と入っていますが、ヨシガモとオカヨシガモは別の種類です。分類上は比較的近い仲間ですが、特にオスの見た目は大きく異なります。
ヨシガモのオスは、緑色に輝く頭部や長く伸びた三列風切が目立つ華やかなカモです。一方、オカヨシガモのオスは全身が灰色や灰褐色に見え、落ち着いた色合いをしています。
名前だけを見て、ヨシガモのオスに似たカモを想像すると、実際の姿との違いに驚くかもしれません。
ヨシガモについて詳しく知りたい方は、ヨシガモが見られる生息地と探す際のポイントもあわせてご覧ください。
オカヨシガモの特徴

オカヨシガモは、オスとメスで羽の色や模様が異なります。
オスは灰色を基調とした細かな模様が特徴です。メスは全体に褐色で、マガモのメスによく似ています。
雌雄共通の重要な識別ポイントが、翼にある白い部分です。羽ばたいたときや飛んだときには、白い翼鏡がよく目立ちます。
ただし、泳いでいるときは翼鏡が羽の中に隠れ、ほとんど見えない場合もあります。翼鏡だけに頼らず、くちばし、体の模様、お尻の色、体型などを総合して判断しましょう。
オカヨシガモのオスの特徴
オカヨシガモのオスは、遠くから見ると全身が灰色に見えます。
マガモやヨシガモのオスのような鮮やかな緑色はなく、ヒドリガモのような赤褐色の顔もありません。そのため、初めて見る人には「地味なカモ」という印象を与えます。
しかし、双眼鏡で観察すると、胸、脇、背中には細かな波状模様やうろこ状に見える模様が入っていることが分かります。
特に注目したい特徴は、次の部分です。
オスのくちばしは黒色から黒灰色です。頭部から首にかけては褐色味があり、胸や脇は灰色を基調として細かな黒い模様が密に入ります。
体の後方には大きな黒い部分があります。正確には尾の付け根周辺にある黒い下尾筒が目立ち、水面を泳いでいると「黒いお尻」のように見えます。
この黒いお尻は、遠くにいるオカヨシガモのオスを見つけるときにも役立つ特徴です。
翼には白い翼鏡があり、その近くには赤褐色の羽もあります。羽繕いをしているときや羽ばたいたとき、飛び立ったときには、白色、黒色、赤褐色が組み合わさった美しい翼の模様が見えることがあります。
脚は黄色から橙黄色です。ただし、水面を泳いでいることが多いため、脚の色を確認できる機会はそれほど多くありません。
オカヨシガモのメスの特徴
オカヨシガモのメスは、全体が茶褐色です。
頭部から背中、翼にかけて黒褐色と淡褐色の斑模様があり、カモ類のメスらしい地味な外見をしています。
特に似ているのがマガモのメスです。オカヨシガモのメスを見つけても、最初はマガモのメスだと思って見過ごしてしまうことがあります。
メスを見分けるときは、くちばしに注目してください。
オカヨシガモのメスのくちばしは、中央部が暗い黒灰色で、側面に橙色が入ります。個体や光の条件によって色の見え方は異なりますが、「暗いくちばしの縁に橙色がある」という印象です。
翼鏡は白色です。マガモのメスの翼鏡は青紫色に見えるため、羽ばたいたときに翼の色を確認できれば重要な識別材料になります。
オカヨシガモのメスは、マガモのメスよりやや小さく、少し細身に見えることがあります。ただし、大きさは距離や姿勢によって変わって見えるため、体格だけで種類を断定するのは避けましょう。
オスとメスに共通する白い翼鏡
翼鏡とは、カモの翼にある色の異なる羽の部分です。
カモが翼を閉じているときには体の側面に小さく見えることがあり、飛んだときには帯状の模様として目立ちます。
オカヨシガモは、オスもメスも白い翼鏡を持っています。
泳いでいる個体では隠れていることも多いため、白い翼鏡が見えないからといって、オカヨシガモではないとは限りません。
羽繕い、羽ばたき、飛び立ち、着水などの瞬間に注目すると、白い部分を確認しやすくなります。
オカヨシガモのオスとメスの見分け方

オスとメスの違いは、繁殖羽が整った冬には比較的分かりやすくなります。
オスは灰色を基調とし、胸や脇に細かな模様があります。くちばしは黒く、お尻にも大きな黒い部分があります。
メスは茶褐色で、全身に比較的大きな斑模様があります。くちばしは暗色で、側面に橙色が入ります。
遠くから観察するときは、まず黒いお尻があるかを確認しましょう。灰色の体と黒いお尻がはっきり見えれば、オスの可能性が高くなります。
次に、くちばしを確認します。黒一色に近ければオス、暗色のくちばしに橙色が入っていればメスである可能性が高いでしょう。
最後に体の模様を見ます。細かな灰色の模様ならオス、大きめの褐色斑ならメスという順番で観察すると、初心者でも見分けやすくなります。
オカヨシガモのエクリプスとは

カモ類のオスは、繁殖期が終わると「エクリプス」と呼ばれる地味な羽衣になります。
冬のオスは雌雄の違いが分かりやすい種類でも、夏から秋の換羽中にはオスがメスに似た姿になることがあります。
オカヨシガモのオスも、エクリプスでは全体に褐色味が強くなり、冬の灰色の姿とは違って見えます。
ただし、メスより灰色味が残ることがあり、黒っぽいくちばしや翼の模様などにオスの特徴が残ります。
秋に日本へ渡ってきた直後には、換羽途中のオスが見られることがあります。体の一部は灰色なのに、別の部分は褐色という、不ぞろいな羽衣になっている個体もいます。
秋のカモを識別するときは、図鑑に掲載されている完成した繁殖羽だけで判断せず、換羽途中の可能性も考えましょう。
オカヨシガモとマガモのメスの違い

オカヨシガモのメスと最も間違えやすいのが、マガモのメスです。
どちらも全身が褐色で、黒褐色の斑模様があります。池に多数のマガモがいる場合、オカヨシガモのメスが群れに交じっていても気づきにくいでしょう。
最も分かりやすい違いは翼鏡です。
オカヨシガモの翼鏡は白色です。一方、マガモの翼鏡は青色から青紫色で、その上下に白い線があります。
ただし、翼を閉じていると翼鏡が見えないこともあります。
体型にも違いがあります。オカヨシガモのメスは、マガモのメスよりやや小さく、細身に見えることがあります。
一つの特徴だけでは判断が難しいため、翼鏡、体格、周囲にいるオスを総合して見分けましょう。
オカヨシガモとカルガモの違い

カルガモは日本の身近な水辺で一年中見られることが多く、オカヨシガモと同じ場所にいることもあります。
カルガモはオカヨシガモより大きく、顔に二本の黒褐色の線があります。くちばしは黒く、先端の黄色い部分が目立ちます。
オカヨシガモのオスには、カルガモのようなはっきりした顔の線や、くちばし先端の黄色い部分はありません。
オカヨシガモのメスも、カルガモより小さく見えることが多く、くちばしの先端だけが黄色くなることもありません。
カルガモの詳しい特徴については、カルガモとは?日本で見られる身近な水鳥の完全ガイドをご覧ください。
カルガモとマガモのメスの識別に迷った場合は、カルガモとマガモのメスの違いと見分け方も参考になります。
オカヨシガモとヨシガモの違い

名前が似ているオカヨシガモとヨシガモですが、繁殖羽のオス同士は簡単に見分けられます。
ヨシガモのオスは、光沢のある緑色の頭部が特徴です。頭の形は後頭部がふくらんで見え、ナポレオンの帽子に例えられることがあります。
首には白い部分があり、翼から後方へ伸びる三列風切も目立ちます。
一方、オカヨシガモのオスは頭部が褐色で、体は灰色です。お尻の黒い部分は目立ちますが、ヨシガモのような緑色の頭部や長い三列風切はありません。
オカヨシガモのほうが、全体的に落ち着いた色合いです。
ヨシガモとマガモの違いについては、マガモとヨシガモの違いと識別ポイントでも詳しく解説しています。
オカヨシガモとヒドリガモの違い

オカヨシガモとヒドリガモは、どちらも日本へ冬鳥として飛来し、同じ水辺で見られることがあります。
ヒドリガモのオスは顔から頭部が赤褐色で、額から頭頂にかけてクリーム色の部分があります。くちばしは青灰色で、先端が黒くなっています。
オカヨシガモのオスは、頭部が褐色で体が灰色です。くちばしは黒く、黒いお尻が目立ちます。
ヒドリガモのメスは、オカヨシガモのメスより赤褐色味が強く見える個体が多い傾向があります。
また、ヒドリガモのオスは「ピュー」「ピュウ」と聞こえる口笛のような声をよく出します。冬の水辺で頻繁に高い声が聞こえる場合は、ヒドリガモがいる可能性があります。
オカヨシガモの日本での生息地

オカヨシガモは、北海道、本州、四国、九州、沖縄県まで、日本の広い範囲で観察記録があります。
ただし、どの水辺にも同じようにいるわけではありません。地域や年によって渡来数が異なり、毎年まとまった数が見られる場所もあれば、数羽だけが飛来する場所もあります。
北海道では、春と秋の渡りの途中に見られるほか、夏まで残る個体や繁殖する個体がいます。
本州では、主に秋から春に見られる冬鳥です。東北地方、関東地方、中部地方、近畿地方、中国地方などの湖沼や河川に飛来します。
四国や九州でも、冬の池、湖、河川、湿地などで観察できます。沖縄県でも冬鳥として記録されますが、本州の代表的な越冬地ほど頻繁に見られるとは限りません。
都道府県単位では、北海道、宮城県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、佐賀県、熊本県、鹿児島県、沖縄県など、各地で観察例があります。
これらは観察例の一部であり、記載していない都道府県では見られないという意味ではありません。
オカヨシガモを探しやすい環境

オカヨシガモは、比較的穏やかな水面を好みます。
探しやすい環境は、湖、池、沼、流れの緩やかな河川、河口、湿地、貯水池、大きな公園の池などです。
特に、水草が豊富な場所や浅い水域がある場所では、採食する姿を観察できる可能性があります。
激しい流れのある川の中央よりも、流れが緩やかな場所、岸辺の入り江、水草が生えている場所などを重点的に探してみましょう。
ただし、淡水の池だけにいるわけではありません。河口や内湾など、海水の影響を受ける環境で見られることもあります。
「淡水ガモ」という呼び方だけを理由に、海に近い場所にはいないと考えないことが大切です。
冬のカモを探す地域別の参考記事として、神奈川県で冬のカモ類を観察するポイントや、千葉県で冬のカモ観察を楽しむためのガイドもあります。
オカヨシガモが見られる季節

オカヨシガモは、日本では主に秋から春に見られます。
地域やその年の気候によって違いはありますが、秋の9月から10月ごろに飛来し始め、11月から翌年2月ごろに観察しやすくなります。
春の3月から4月ごろになると、北の繁殖地へ向かう個体が増え、日本の越冬地では少しずつ数が減っていきます。
秋のオカヨシガモ
秋は、日本へ渡ってきたばかりのオカヨシガモが見られる季節です。
この時期のオスは、まだ完全な繁殖羽になっていないことがあります。エクリプスから換羽している途中で、メスに似た褐色の羽と、灰色の繁殖羽が混じっている場合もあります。
秋にオカヨシガモを探すときは、完成した冬羽だけでなく、換羽途中の個体にも注意しましょう。
冬のオカヨシガモ
冬は、オカヨシガモを最も見つけやすい季節です。
オスの繁殖羽が整い、灰色の体、黒いくちばし、黒いお尻が分かりやすくなります。
マガモ、カルガモ、コガモ、ヒドリガモ、ヨシガモ、オオバンなどと同じ水域で見られることがあります。
単独で探すよりも、カモの群れを一羽ずつ確認する方法がおすすめです。
春のオカヨシガモ
春になると、オカヨシガモは北へ移動を始めます。
越冬地では数が減っていきますが、渡りの途中で一時的に個体数が増える場所もあります。
3月ごろには、冬羽の美しいオスを観察できる一方、繁殖地へ向かう準備をしているため、群れの構成が変化することもあります。
夏にもオカヨシガモはいる?
日本の多くの地域では、夏になるとオカヨシガモはほとんど見られなくなります。
しかし、北海道や本州の一部では、夏まで残る個体や繁殖する個体が確認されています。
また、けがや体調などの理由で渡らずに越夏する個体が現れる可能性もあります。
夏に見られたからといって、必ず繁殖しているとは限りません。周辺に巣やヒナがいないか探し回らず、離れた場所から静かに観察しましょう。
オカヨシガモの渡り

オカヨシガモは、ユーラシア大陸の北部を中心とした地域で繁殖し、秋になると南へ移動する渡り鳥です。
日本へ飛来する多くの個体は、日本の湖沼、河川、湿地などを越冬地として利用します。
秋の渡りでは、繁殖地から越冬地へ南下します。春の渡りでは、秋と反対に北上し、繁殖地へ戻ります。
北海道は繁殖地、渡りの中継地、越冬地という複数の役割を持つため、地域や季節によって見られ方が異なります。
本州以南では、主に越冬する個体が観察されます。
渡りの時期や飛来数は毎年完全に同じではありません。気温、水面の凍結、水草の量、水位、天候などの影響によって、利用する水辺が変わることがあります。
前年に多く見られた場所でも、翌年は少ないことがあります。反対に、これまで少なかった場所へまとまった群れが飛来する場合もあります。
オカヨシガモの鳴き声

オカヨシガモは、ヒドリガモのように頻繁に目立つ声で鳴くカモではありません。
水面で静かに休んでいることも多く、姿を見つけても鳴き声を聞けないことがあります。
オスは、短く低い「メッ」「ゲッ」「グェッ」のような声を出します。求愛行動などでは、鼻にかかった声や短い笛のような声を出すこともあります。
メスは「ガッガッガッ」「ガガガ」と聞こえる声で鳴きます。マガモのメスの鳴き声に似ていますが、やや高く、鼻にかかったように聞こえる場合があります。
鳥の鳴き声を人の言葉で完全に表現することはできません。距離、周囲の音、個体差によっても聞こえ方が変わるため、文字は目安として考えましょう。
鳴き声を聞きやすいのは、群れが移動するとき、飛び立つとき、ほかの個体が接近したとき、つがいで行動しているときなどです。
冬の水辺では、さまざまなカモの声が重なります。声だけで判断せず、鳴いている個体のくちばしの動きも確認すると識別しやすくなります。
オカヨシガモの食べ物

オカヨシガモは、水草などの植物質を中心に食べます。
主な食べ物は、水草の葉、茎、根、種子、藻類などです。水面や浅い水中にある植物を、平たいくちばしでこし取るようにして食べます。
植物質だけでなく、水生昆虫、昆虫の幼虫、小さな貝類、甲殻類などの動物質も食べます。
特に繁殖期には、卵を産むための栄養や成長に必要なたんぱく質を得るため、動物質を利用する割合が高くなることがあります。
ヒナも、成長初期には小さな昆虫や水生生物などをよく食べ、成長するにつれて植物質を多く利用するようになります。
オカヨシガモの採食方法
オカヨシガモは、水面を泳ぎながらくちばしを水中へ入れ、植物や小さな生き物を探します。
浅い場所では、首を深く水中へ伸ばします。さらに深い位置の食べ物を取るときは、頭と胸を沈め、尾を上に向けた逆立ちのような姿勢になります。
基本的には水面採食ガモですが、状況によっては短時間潜ることもあります。
また、オオバンなどの潜水できる水鳥が、水中から運んできた水草を利用することがあります。
オオバンが水草をくわえて浮上すると、その近くにオカヨシガモやヒドリガモが集まることがあります。水草の一部を横から取るような行動が見られる場合もあり、水辺の鳥同士の関係を観察できる興味深い場面です。
オカヨシガモの暮らしと行動

オカヨシガモは、数羽から数十羽ほどの群れで行動することがあります。
非常に大きな群れを作る場合もありますが、マガモやヒドリガモなど、ほかの種類の群れに少数が交じっていることも少なくありません。
日中は水面で休んだり、羽繕いをしたり、ゆっくり採食したりします。
冬にはオスとメスがつがいのように並んで泳いでいる姿も見られます。カモ類の多くは、繁殖地へ戻ってからではなく、越冬地や渡りの途中でペアを形成し始めます。
オスがメスの周囲で頭や首を動かしたり、声を出したりする求愛行動が観察できることもあります。
警戒して飛び立つときには、水面を蹴るようにして助走します。飛翔時には雌雄とも白い翼鏡が目立つため、種類を確認する絶好の機会です。
オカヨシガモの繁殖

オカヨシガモの主な繁殖地は、ユーラシア大陸北部などにあります。
日本では北海道を中心に少数が繁殖し、本州でも局地的な繁殖例があります。ただし、日本で冬に見られる数と比べると、国内で繁殖する個体は多くありません。
巣は、水辺に近い草地や湿地周辺の地上に作られます。草や低い植物に隠れるような場所を選び、メスが植物や自分の綿羽を使って巣を整えます。
抱卵は主にメスが行います。
ヒナは、卵からかえると比較的早い段階で巣を離れ、親鳥について歩いたり泳いだりします。水面や浅瀬で食べ物を探しながら成長します。
親子や巣を見つけても、近づいたり、草むらへ入ったりしないでください。親鳥が警戒して巣を離れると、卵やヒナが危険にさらされる可能性があります。
オカヨシガモは珍しい鳥?

オカヨシガモは、日本で極めて珍しい迷鳥ではありません。
冬には北海道から本州、四国、九州、沖縄県まで広い範囲で記録されます。地域によっては、毎年まとまった数が飛来することもあります。
一方で、マガモ、カルガモ、コガモ、ヒドリガモなどに比べると、見る機会が少ない地域もあります。
そのため、「全国的には珍鳥ではないが、どこにでも普通にいるとは限らないカモ」と考えるのが分かりやすいでしょう。
オカヨシガモが珍しく感じられる理由の一つは、オスも地味な色をしていることです。
多くのカモ類では、オスが鮮やかな色をしています。オカヨシガモのオスは灰色なので、遠くから見るとメスのカモや水面の影に見えてしまいます。
さらに、ほかのカモの群れに少数で交じっていることが多く、意識して探さなければ見落としやすい種類です。
初めて見つけた場所で翌年も見られるとは限りません。渡来数や利用する水辺は変化するため、複数の池や河川を継続して観察すると出会える可能性が高まります。
オカヨシガモを見つけるコツ

オカヨシガモを見つける最も効果的な方法は、冬のカモの群れを一羽ずつ確認することです。
まずは、全体が灰色に見える中型のカモを探します。
オスであれば、黒いくちばしと黒いお尻が大きな目印です。胸や脇に細かな模様が見えれば、オカヨシガモである可能性が高くなります。
メスを探すときは、マガモのメスに似た少し小柄な個体に注目してください。くちばしの中央が暗く、側面に橙色があるかを確認します。
羽ばたいたときには、白い翼鏡を探しましょう。
オカヨシガモは、水草のある浅い水域で採食することが多いため、広い水面の中央だけでなく、岸辺、水草の周辺、流れの緩い場所も探してください。
オオバンが潜水して採食している場所も注目したいポイントです。浮かび上がった水草を利用するため、オカヨシガモが近くにいる場合があります。
カモ類の顔やくちばしから種類を絞り込みたい場合は、カモ類の顔の特徴と違いも役立ちます。
双眼鏡で確認したいポイント
遠くにいるオカヨシガモを観察するときは、最初から細かな羽模様を見ようとすると難しく感じます。
まずは体全体の色を確認してください。オスなら灰色、メスなら褐色が基本です。
次に、くちばしを確認します。オスは黒色、メスは暗色を中心に側面が橙色です。
その次に、お尻の色を見ます。オスの黒い下尾筒は、遠くからでも比較的確認しやすい特徴です。
最後に、胸や脇の模様、翼鏡、脚の色など、細かな部分を確認しましょう。
観察する順番を決めておくと、短時間でも特徴をつかみやすくなります。
オカヨシガモを観察するときのマナー

オカヨシガモを観察するときは、鳥が自然な行動を続けられる距離を保ちましょう。
カモの群れが首を伸ばしてこちらを見続けている場合は、警戒されている可能性があります。
さらに近づくと、一斉に泳いで離れたり、飛び立ったりします。飛ばしてしまう前に立ち止まり、必要であれば少し後ろへ下がってください。
カモにパンや菓子などの餌を与えることも避けましょう。
人の食べ物はカモに適した栄養ではなく、食べ残しによって水質が悪化する原因にもなります。餌付けによって人を恐れなくなると、道路や釣り場へ近づく危険も高まります。
撮影するときも、より大きく撮るために水際へ近づきすぎないことが大切です。双眼鏡や望遠レンズを利用し、離れた場所から静かに観察しましょう。
オカヨシガモについてよくある質問
オカヨシガモは日本のどこにいますか?
日本では北海道、本州、四国、九州、沖縄県まで広い範囲で記録されています。
主に湖、池、沼、流れの緩やかな河川、湿地、河口、貯水池などに飛来します。地域によって数が異なるため、どの水辺でも必ず見られるわけではありません。
オカヨシガモは何月に見られますか?
多くの地域では、秋から春に見られます。
一般的には9月から10月ごろに飛来し始め、11月から翌年2月ごろが観察しやすい時期です。3月から4月ごろには北へ渡る個体が増えます。
オカヨシガモは冬鳥ですか?
日本では主に冬鳥です。
ただし、北海道や本州の一部では繁殖例があり、夏まで見られる個体もいます。そのため、すべての地域で冬だけ見られる鳥とは限りません。
オカヨシガモは珍しい鳥ですか?
日本で極めて珍しい鳥ではありません。
しかし、マガモやカルガモなどより少ない地域があり、地味な羽色で見落とされやすいため、初心者には珍しく感じられることがあります。
オカヨシガモのオスの特徴は?
灰色の体、細かな波状模様、黒いくちばし、黒いお尻が特徴です。
翼には白い翼鏡と赤褐色の部分があり、飛んだときや羽ばたいたときに目立ちます。
オカヨシガモのメスの特徴は?
全身が茶褐色で、黒褐色と淡褐色の斑模様があります。
マガモのメスによく似ていますが、翼鏡が白いことや、暗色のくちばしの側面に橙色が入ることが識別の手掛かりです。
オカヨシガモとヨシガモは同じ鳥ですか?
別の種類です。
ヨシガモのオスは光沢のある緑色の頭部と長い三列風切が特徴です。オカヨシガモのオスは灰色の体と黒いお尻が特徴で、見た目は大きく異なります。
オカヨシガモは水中に潜りますか?
主に水面や浅い水中で食べ物を探す水面採食ガモです。
頭を水中へ入れたり、逆立ちのような姿勢になったりして採食します。状況によって短く潜る場合もありますが、海ガモのように何度も深く潜ることは多くありません。
オカヨシガモは何を食べますか?
水草の葉、茎、根、種子、藻類などを中心に食べます。
水生昆虫、昆虫の幼虫、貝類、甲殻類などの動物質を食べることもあります。
オカヨシガモの鳴き声は?
オスは「メッ」「ゲッ」「グェッ」のような短く低い声を出します。
メスは「ガッガッガッ」「ガガガ」と聞こえる声で鳴きます。ただし、比較的静かなカモなので、観察していても声を聞けない場合があります。
まとめ|オカヨシガモは地味な羽に繊細な美しさを持つ冬のカモ

オカヨシガモは、日本では主に秋から春に見られる冬鳥です。
北海道から本州、四国、九州、沖縄県まで広い範囲で記録され、湖、池、沼、河川、湿地、河口などで生活しています。
オスは灰色の体、細かな模様、黒いくちばし、黒いお尻が特徴です。
メスは全身が茶褐色でマガモのメスによく似ていますが、白い翼鏡やくちばしの色が見分ける手掛かりになります。
食べ物は水草などの植物質が中心で、水生昆虫や小さな貝、甲殻類なども利用します。水面にくちばしを入れたり、お尻を上げて逆立ちしたりしながら採食します。
全国的に極めて珍しい鳥ではありませんが、地域によっては数が少なく、ほかのカモの群れに紛れて見落とされやすい種類です。
冬の水辺を訪れたら、派手なカモだけでなく、灰色のカモにも注目してください。
黒いお尻と白い翼鏡を見つけられれば、これまで見過ごしていたオカヨシガモの上品な美しさに気づけるでしょう。


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